悲しい知らせ

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悲しい知らせ

 ある日の仕事帰り。  マネージャーの車の中で、スマートフォンがけたたましく音を立てる。  なぜかその時、ふと笑実の顔がよぎる。  知らない番号からだった。 「03」から始まる番号。  恐る恐る通話をタップする。 「並木さんですか?」  電話をくれたのは笑実のマネージャーの佐竹さんだった。声のトーンがやたらと重い。  フリーコールの音声ガイダンスみたいに、要件だけを淡々と一方的に告げる。そのせいか受話器の向こうから聴こえてくる話を理解するのに時間がかかってしまった。   笑実が倒れました――。   ライブのリハーサル中に突然倒れたらしい。しばらく入院することになりました、と、佐竹さんは感情のこもらない言葉で言った。  
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