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笑実の様子が確かにいつもとは違った。
まぁ、幼い頃から大人と同じ目線で物事を見ようとする冷静な子だったけど、20歳になってからは逆にお茶目で無邪気な一面を見せてくれることもあったのに。
俺はこの冬発売予定の「歌手デビュー10周年記念アルバム」のレコーディングのために、世田谷のスタジオに来ていた。
それまで役者一本でやってきた俺がCDを出すことになったのは、主演ドラマが決まって、「主題歌も歌いませんか?」と持ちかけられたのがきっかけだった。
――それから紆余曲折を経て今がある。
同じ日に笑実のレコーディングがあるという話を聞いて、偶然を装ってスタジオに顔を出すことにした。それにはある理由があった。
笑実の男性マネージャーから俺のマネージャーに連絡が入ったのが1ヶ月前。
「俳優、並木拓馬さんという立場ではなく、遠藤笑実の兄代わりとして相談したいことがあるので時間を取って欲しい」という話だった。
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