ショッキングピンクの傘

6/7
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「どうしたの?」 「だって、こんなに広い場所なのに、ひかりちゃんの傘、すぐ分かっちゃった。目印にちょうどいいね!」 と笑いながら言う。 私は、もう一度観客席に目を向けた。 確かに、他の誰の荷物よりも、あのショッキングピンクの傘が目立っていた。 ステージからでも、ハッキリと自分の傘だと分かって、私も思わず笑ってしまった。 ナーバスになっていた気持ちが、ほんのりと和らいで、少しだけあの派手な傘に感謝した。 結局、中学三年間、私とショッキングピンクの傘とのお付き合いは続き、高校入学と同時にお役御免になった。 「ひかりねぇちゃん!カタツムリがいるよ!」 と叫んだカズ君の声で、私はハッと現実に引き戻された。 カズ君の指差す溝を見てみると、小さなカタツムリがうねうねと動いていた。 「ほんとだね~。小さいカタツムリだね~」 と何だかホンワカした気持ちで答えた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!