プロローグ

1/1
前へ
/9ページ
次へ

プロローグ

それは、 蒸し暑くて痛いくらいに陽射しが照りつける、 ある夏の日だった。 「蒼、お前は心から笑えているのか?」 「誰の人生を生きているんだ?」 「どれだけ笑顔を取り繕ったって、 心が笑ってなきゃ、なにも生まれないからな。」 彼は笑顔でそう言って、僕の肩をトンっと叩き教室を出て行った。 「・・・・・フーッ」 大きなため息が出た。 全くこの人は。 突然、柄にもないことを言う時がある。 だから余計に染みてしまう。 心に。 おかしいな。 僕に心なんてあったのかな? こんな感情なんてないはずなのに。 この時、なにかが崩れ落ちた。 でもそれはなんなのか、 この時の僕には分からなかった。 冷房もない教室で暑いはずなのに、窓から入る風がひんやりと感じた。 そして、 僕の本当の人生が始まったんだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加