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「二人いたほうが、良かったですか?」
キュウンという鳴き声が聞こえてきそうな、不安そうな表情だ。いや、多分見た目はそんなに変化は無いのに、なぜか美晴の目にはそう見えてしまう。先週の出来事も、美晴には焦ったように照れたように見えた井草の態度は、客観的にはとても落ち着いたものだった。
「いいえ、いいですよ」
そう言って微笑むと、先ずは最初の目的のハンカチを取り出す。一応コンビニ菓子も添えて、透明なラッピング袋に入れてみた。
「先週はありがとうございました」
「いや、元は俺がぶつかったのが悪いんで」
「それでも、丁寧に謝っていただきましたし」
そしてこの話はお終いにするように、美晴は井草にハンカチを手渡す。
「それでこの後なんですが、今日もおにぎり買う予定ですか?」
「なんでそれを」
驚いたように僅かに目を見開く井草をみて、逆に美晴のほうが不思議に思ってしまった。あれだけ毎回おにぎりの具について熱く語っているのに、自分たちの熱量について自覚をしていないのだろうか。
「コンビニでおにぎり買うならお勧めしたいところがありまして。すぐそこなんで、ちょっと付いて来てくれますか」
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