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1.プロローグ
たけしはお弁当を作っていた。
キャラクターが描いてあるピンクの小さな弁当箱に、不器用な手付きでおかずを詰める。
卵焼きはスクランブルエッグになってしまったし、その間にブロッコリーは茹ですぎて深緑色でくたくたになってしまっている。
作り直そうかとも思ったが、それよりも時間に間に合わなくなることの方がこわくて、仕方なくそのまま詰めることにした。
そもそも、たけしは弁当なんて作ったことがなかった。
一人暮らしの時はコンビニで済ませていたし、結婚してからはずっと妻のひろみが作ってくれている。
ご飯を詰めると、おかずを入れる場所なんてほんのちょびっとしかない。子どもの弁当箱ってこんなに小さいのか。冷凍唐揚げ一個でおかずの半分近くを占めている。
卵焼きなら安定感があったのに、スクランブルエッグだから何か落ち着かない。詰めたり出したり試行錯誤を繰り返す。
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