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「でも、本当にたけし大丈夫? 子どもたち、置いていくんだよ? 桜と桃は学校や幼稚園があるから休ませるわけにいかないし……」
まさかたけしが引き受けるとは思わなかったのだろう。
ひろみはさっきと打って変わって心配そうな表情になっている。
「一週間くらい大丈夫だって、僕だって父親なんだから。そのかわり、リフレッシュ休暇が終わったらさっきの63万の話は無しだからな」
「それはいいけど……」
ひろみは何か考えているようで、黙り込む。
いや、もしかしてたけしが一週間を乗り切ってさっきの話を無しにされるのが嫌なのだろうか。
それならばひろみが「やっぱりだめ」と言い出さないうちに、このリフレッシュ休暇の交換条件を確かなものにしておく必要がある。
たけしは子どもたちを味方につけることにした。
「桜、桃、花、今度ママちょっと用事があってな、一週間だけ家を留守にするんだって。一週間だけパパと留守番できるよな?」
「え? ママいないの?」
「やだー」
「ママがいいー」
くそっ、いつも喧嘩してるくせに、こういう時だけ3人揃って!
でも、ここで引くたけしではない。
63万と自分の地位を守り抜くためなら何だってやる。
「頑張ろうよ。パパといっぱい遊ぼうな。お出かけとか、お菓子も買ってやるぞ! パパと留守番、楽しいぞお」
「やったー! 遊ぶー」
「留守番できるー」
三姉妹はママがいないというところに少し引っかかりながらも、楽しく遊べるということとパパと留守番という響きに引っ張られて、簡単に味方についた。
「大丈夫かなあ、パパ……」
長女の桜だけは何かを感じ取ったのか不安そうな表情を浮かべていたけれど、別に否定はしなかった。
「そう? じゃ、行ってこようかな。ちょっと実家に連絡してくるね」
ひろみは少し思案してまた笑顔に戻った。
たけしは心の中でガッツポーズする。
たった一週間、ひろみのいない時間を過ごすだけでいいだなんて……
「おう、実家の両親にもよろしくな」
たけしは顔が綻びそうなのを我慢しながら、留守番に心踊らせていた。
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