3.ひろみ出発

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 お風呂に入れるのは、いつもたけしの仕事だった。桜が赤ちゃんの時からずっと、子どもたちをお風呂に入れている。  桜と桃は、今では二人で入れるようになったけれど、花は今でもたけしと一緒に入っている。まあ、仕事から早く帰った時や休日だけだけれど。  ひろみが留守の間は、四人全員で入ることにした。  たけしは子ども達をお風呂に入れる自信だけはあった。 「さあ、パパとお風呂に入るぞ」 「わーい!」  三姉妹はお風呂が大好きだ。半分は水遊びだと思っているのだろう。  ママがいないから、たくさん遊んで長風呂をしても叱られないのも嬉しいのかもしれない。  まずたけしが先に入って自分を洗い、次に子どもたちを呼ぶ。一人洗ってはボタンを鳴らして次を呼ぶのを3回繰り返す。    お風呂用のおもちゃネットには、水鉄砲やアヒルやプリンのカップなどが入っている。 「それ、私の!」 「桃が遊んでたんだよ!」 「花もするー」  すぐに三姉妹で喧嘩が始まった。 「別ので遊べばいいじゃないか。おもちゃいっぱいあるんだから。桜、貸してやれよ」  女の子だから、いつまでこうやって一緒にお風呂に入ってくれるのだろう、と思うと、何だか喧嘩の仲裁ですら嬉しかった。  風呂から出ると特にすることもないので、早めに布団に入った。  隣から三姉妹の寝息が聞こえる。  可愛いもんだな。  布団をそっと掛け直しながら、たけしは幸せだった。  こんなにたっぷりな時間を子ども達と一緒に過ごしたのは、久しぶりな気がした。
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