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4.花という名前
『桜』の名前はすぐに決まった。
健診で女の子らしいとわかった夫婦は、妊娠八ヶ月頃から名前を考え始めた。初めてのデートが花見だったことや産まれる季節が春だったことから、「桜がいいね」と、夫婦で話していた。
初孫ということもあり、お互いの両親にも相談した。反対するものは誰もいなかった。
『桃』の名前は、産まれてから決めた。
桜と同じ木へんの植物の名前がいいかなと、夫婦で話していた。
最終候補まで残っていたのは『楓』と『桃』だった。どちらも素敵だったから決め手に欠けて、顔を見てから決めようということになった。
二人目だからすぐに産まれるだろうと思っていたけれど、お腹の中で大きく育っていた赤ちゃんはなかなか出てこなかった。
やっと出てきたその顔は真ん丸で、産声を上げるその頬っぺたはピンクだった。
小さな桜は、「ももちゃん、ももちゃん」と喜んだ。
『花』の名前は、なかなか決まらなかった。
『桜』『桃』ときたので、やっぱり木や花の名前がいいと思った。木へんの漢字をいろいろと探したけれど、どれもピンとこなかった。
『梅』も頭をよぎったが、何となくおばあちゃんが連想されてやめにした。
「花の名前、花の名前」と言っているうちに、桜と桃がママのお腹を撫でながら「はなちゃん」と呼び始めた。
「はなちゃーん、早く出てきてねー」
「ママ、はなちゃん動いたよ!」
それがすっかり定着し、『花』になった。
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