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「パパお弁当できたあ?」
ダイニングの机の方から次女、桃の声がする。彼女がこの弁当を食べるのだ。
「もう少しだから待ってな。朝ごはん食べ終わったか?」
最後に枝豆を入れてミニトマトを飾りながら見ると、桃の食べている食パンはまだ半分以上残っている。
目はテレビに固定されていて、パンを持った手も口も動いていない。
「桃! 早く食べないと園バスがきちゃうぞ!」
「うん……」
目はやっぱりテレビに固定されたままで、口だけがもそもそと動き始める。時計の針は止まらないのに、子どもというのはどうしてこう焦らないのだろう。
「行ってきまーす」
そうこうしているうちに、長女の桜が登校する時間となり、自分で時間通りに出て行った。
「お、おお、行ってらっしゃい。いろいろありがとうな」
さすが長女、まだ二年生なのにさっさと朝食を食べ終え、自分で準備も済ませ、桃の幼稚園カバンまで準備してくれた。
何も言うことないな……そう思ってふとダイニングの机の上を見ると、桜の連絡帳が置いてある。
しまった! 届けなければ!
まあ、忘れても何とかなるか……
いや、だめだ、毎日の健康チェックや体温を記録したカードもはさまっている。
瞬時にいろいろ考えをめぐらせ、やはり届けなければと連絡帳をつかむ。
「桃、ちょっと桜に連絡帳届けてくるから、食べてるんだぞ!」
「うん……」
信用できない声が返ってくる。絶対食べる気ないだろう。
でも今はこの連絡帳を届けるのが先だ。玄関へ向かおうとリビングのドアを開けると、階段から降りてくる三女と鉢合わせた。
「パパ、おはよう」
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