1.プロローグ

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「パパお弁当できたあ?」   ダイニングの机の方から次女、(もも)の声がする。彼女がこの弁当を食べるのだ。 「もう少しだから待ってな。朝ごはん食べ終わったか?」  最後に枝豆を入れてミニトマトを飾りながら見ると、桃の食べている食パンはまだ半分以上残っている。  目はテレビに固定されていて、パンを持った手も口も動いていない。 「桃! 早く食べないと園バスがきちゃうぞ!」 「うん……」  目はやっぱりテレビに固定されたままで、口だけがもそもそと動き始める。時計の針は止まらないのに、子どもというのはどうしてこう焦らないのだろう。 「行ってきまーす」  そうこうしているうちに、長女の(さくら)が登校する時間となり、自分で時間通りに出て行った。 「お、おお、行ってらっしゃい。いろいろありがとうな」  さすが長女、まだ二年生なのにさっさと朝食を食べ終え、自分で準備も済ませ、桃の幼稚園カバンまで準備してくれた。  何も言うことないな……そう思ってふとダイニングの机の上を見ると、桜の連絡帳が置いてある。  しまった! 届けなければ!   まあ、忘れても何とかなるか……  いや、だめだ、毎日の健康チェックや体温を記録したカードもはさまっている。  瞬時にいろいろ考えをめぐらせ、やはり届けなければと連絡帳をつかむ。 「桃、ちょっと桜に連絡帳届けてくるから、食べてるんだぞ!」 「うん……」  信用できない声が返ってくる。絶対食べる気ないだろう。  でも今はこの連絡帳を届けるのが先だ。玄関へ向かおうとリビングのドアを開けると、階段から降りてくる三女と鉢合わせた。 「パパ、おはよう」
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