5.月曜日 前半

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 さて、今日は姉ちゃん二人を送り出して、花と公園にでも出掛けよう。  たけしは足音を立てぬよう静かに階段を降りながら考える。  リビングに降りると、床に寝転がるくまのが出迎えた。そう言えば花が寝る前まぬいぐるみで遊んでいたな。拾ってソファーに座らせる。  さあ、料理開始だ。  流し台で手を洗おうとして、たけしは愕然とする。  コップにお茶碗、箸、平皿などの食器類、それから、おかずの入っていた鍋等がそのままシンクに溢れている。  そうだ、昨日、晩ごはんを食べてそのままにしていたのだ。  お風呂に入れたりテレビを観たりしているうちにすっかり忘れてしまって、そのまま寝てしまった。  くそっ、面倒だな。  予定外の仕事が入り、出鼻をくじかれる。でも仕方がない。それを片付けるべき人は、たけしなのだ。  よし、やるか。  気合を入れ直して洗い物に気持ちを向かわせる。そう思ってスポンジを泡立てたところで、シンクの中央に炊飯釜を見つけた。 しまった! ご飯を炊いていない!  余裕を持っていたはずの時間が急になくなる。  パンでもいいか…… そう思った時、いつかのひろみのつぶやきが頭に浮かんだ。 「朝は、桃はパンでもいいんだけど、桜はご飯しか食べないのよねえ。何でだろ」  パパはご飯を炊いてくれなかった。  そんな報告をされたら、63万の交換条件が認められないかもしれない。  くそっ。  たけしは急いで釜を洗い、米をとぐ。  そう言えば、ご飯を炊くのも随分と久しぶりだった。  結婚前、一人暮らしをしていたとき以来だな。そんなことを考えながら炊飯器にセットし、早炊きのボタンを押した。
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