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洗い物を終えて時計を見ると、桜と桃を起こす時間がすぐそこに迫っていた。今からでは、朝ごはんなんて作っている暇はない。
ちらり。
たけしはトースターの脇にある籠に目をやった。その籠には、ひろみがストックしているインスタント味噌汁やスープなどが入っている。
『手抜き籠』
たけしが心の中でそう名付けていた籠は、今や『神様籠』だった。
「どれでも好きなの選んでいいぞ」
「やったー!」
桜と桃が『神様籠』の中から選んだ袋を開け、湯を注ぐ。大丈夫、父親の威厳は、まだ保たれている。
桜と桃が朝ごはんを食べるのを見ていると、机の上に数枚の紙を見つける。
ひろみが家を出るときに紙に書いてあるとか言っていたけれど、こんなに書かなくても大丈夫なのにと思いながら、昨夜、机の端に寄せたのだ。
たけしがその紙の束を手に取って見ると、『毎日すること』と書かれた紙が一枚と、月曜日から金曜日まで曜日ごとに一枚ずつ、計六枚もある。
『月曜日』の紙を抜き出して見ると、縦に時間、横に桜、桃、花と区切られ、スケジュール表のようになっていた。
ひろみはいちいち細かすぎるんだよなと思いながら読んだ一行目で、すでに躓く。
『桃、月曜セットを忘れずに(幼稚園のプリント参照)桜の月曜セットは自分で用意できると思います。忘れないように声かけだけしてね』
月曜セット? 何だ? 幼稚園のプリント? どこだ?
たけしにとっては、もはや謎解きの暗号だ。
スケジュール表を持ってウロウロしているたけしにため息をついた桜が、桃の幼稚園カバンを取りに行く。
「もう、パパ、しっかりしてよね」
桜は冷蔵庫のプリントを見ながら、妹のシューズや帽子を黄色い袋に手際よく詰める。
さすが、頼りになるのはお姉ちゃんだ。
たけしは幼稚園のプリントは冷蔵庫の横、と、インプットする。
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