7.月曜日 後半

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7.月曜日 後半

「大丈夫?」  電話越しのひろみの声は、とても心配そうだった。 「桜と桃はちゃんと行った? 花はいい子にしてる?」 「大丈夫だよ。元気に行ったよ。花もいい子でご飯食べてる」 「そう、よかった」  たけしから様子をきいて安心したのか、ひろみの口調が少し柔らかくなる。 「そっちはどう? ゆっくりしてる? お義母さんたち元気?」 「うん、まあ、忙しくしてるけど、みんな元気だよ〜」  忙しくしてるって、休みじゃないか。  ひろみが楽しそうな様子が、たけしには何だか悔しくもあり腹立たしくもある。 「あ、たけし、金曜日の紙に書き忘れてたんだけど、桃の幼稚園の懇談があったと思う」  ひろみの話の途中。電話越しに男性の声が聞こえた。 「小笠原(おがさわら)さん、ちょっと」 「あ、わかりました」  電話の向こうでそれに答えるひろみの声。 「たけしごめん、また連絡するね。懇談の紙はカレンダーに貼ってあるから」 「ちょっと、ひろみ、実家にいるんじゃないのか?」  実家でゆっくり休んでいるとばっかり思っていたたけしは慌てる。 「いいじゃない、私もリフレッシュ休暇なんだから何したって。じゃ、たけし、頑張ってね」 「ちょ、ちょっと、さっきのは誰……」  たけしの話を最後まで聞かず、ひろみはさっさと電話を切る。  前を見ると、ご飯粒をつけた花がスプーンを握ったまま机に突っ伏して寝ていた。 『花、一時ごろ、昼寝』  そっと隣の和室に連れていき、タオルケットをかけた。
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