1.プロローグ

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 くそっ、なぜこのタイミングで起きてくるんだ!  なんて、子どもに言っても仕方がない。 「ああ、(はな)、おはよう。パパちょっと出てくるけど、すぐ戻るからな。桃が部屋にいるから、ちょっと待っててな」 「うん……」  花は眠い目をこすりながら、桃のいるリビングに入っていく。  それを確認したたけしは、玄関から飛び出した。  さっき家を出たばかりのはずの長女、桜の姿は、もうどこにも見えない。  他の子ども達を追いかけ追い越しながら通学路らしき道を進むと、ようやく見慣れたランドセルを見つけた。 「桜、連絡帳忘れてたぞ!」 「パパありがとう。でも、パジャマじゃん」    桜に言われて自分の格好を思い出した。慌てて周りを見ると、クスクス笑う通行人が目に入って、たけしは赤面する。おかげで帰りも全速力だ。  家に戻ると、やはりまだ桃はテレビを観ながらパンをかじっていた。  もうこれ以上は待てないか。 「桃、もう残していいぞ。着替えないと」 「はあい」  気のない返事をして桃が立ち上がる。 「桃、バンザイして」  テレビに釘付けのままバンザイをした桃からパジャマを剥ぎ取り、幼稚園の体操服を頭からかぶせる。
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