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ハイコンテクストサバイヴ
ーー時は、20XX年。
人類は、未曾有の危機に晒されていた。
突然街中に現れた謎のモニュメント、
世界中の人は、言語が通じなくなり、暴力による陣地争いが各地で起こるようになった。
ここ日本も例外ではなく、日本人同士でも言葉が通じないということが起きており、首都を中心に大きな混乱が起き、政府は破綻した。
統治国家、民主主義が成立しない世の中で、
新たな言語手段を開発する者、
身振り手振りでコミュニケーションを取ろうとする者、
只々塞ぎこむ者、
街に出て暴力に走る者など、
世界は混乱の渦中にある。
地位も名誉もなくなり、職業はおろか、学者も赤子もみな言語を失ったことで、平等となった。
言語の存在しない世の中で、日本は新たな局面を迎える。
独立国家の乱立である。
地方を中心に、村社会を形成していた者たちにとって、言語の消失は追い風となった。
古くからある権力が興隆し、団結力は強固なものとなり、数々の独立国家が生まれた。
首都圏、地方都市は、多くの人々を有するが故、まとまりがなくなり、帰属意識も存在しない状況で、各自が個人による防衛を取らざるを得なくなった。
嘗てのマジョリティーはマイノリティーへと変化し、言語によって成立していた脆弱な文化は次々と失われていった。
阿鼻叫喚の中、人類には新たな能力に目覚めようとしていた。
それは、空気察知能力である。
一部の人類に異様にその能力の長けた種族が存在した。
推し量る、拝察する、察するといったハイコンテクスト文化を良しとしてきた日本人である。
これは世界と逆行し、察する事を重んじてきた日本人による、再開拓の話である。
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