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「鈴木さん、調子はどうですか?」
くたびれた50代の看護婦が、青志の部屋の見回りに来た。
「見てわからないか?」
バビロンの大富豪を読みながら、青志は険悪な眼差しを送った。
「わからねえから聞いてんだろうが。なあ?」
看護婦の形相が、変わった。
「だ、大丈夫でえす」
囁くような声で青志が言った。
「だっさ、しょっぼ、ハッゲ」
パーテーションで仕切られた、隣のベッドで寝ている84歳のおばあちゃんが、鼻で笑った。
気を悪くした青志は、拳で軽くパーテーションを叩いた。
いくら老人とはいえ、人のことを悪く言う人は許せなかった。
「鈴木さん?ちょっといいですか?」
医師の富山が、首だけ覗かせて手招きした。
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