青魚

11/20
前へ
/20ページ
次へ
「鈴木さん、調子はどうですか?」 くたびれた50代の看護婦が、青志の部屋の見回りに来た。 「見てわからないか?」 バビロンの大富豪を読みながら、青志は険悪な眼差しを送った。 「わからねえから聞いてんだろうが。なあ?」 看護婦の形相が、変わった。 「だ、大丈夫でえす」 囁くような声で青志が言った。 「だっさ、しょっぼ、ハッゲ」 パーテーションで仕切られた、隣のベッドで寝ている84歳のおばあちゃんが、鼻で笑った。 気を悪くした青志は、拳で軽くパーテーションを叩いた。 いくら老人とはいえ、人のことを悪く言う人は許せなかった。 「鈴木さん?ちょっといいですか?」 医師の富山(とみやま)が、首だけ覗かせて手招きした。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加