青魚

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いい話ではない。 青志は本能的に、それを察知した。 だが、呼ばれたからには、ついていかないわけにはいかなかった。 なんの話をされるのかは、まだわからない。 白衣の裾を揺らめかせて歩く富山の背が、妙にいやらしく感じた。 「富山先生、ちょっと」 ナースステーションを横切るときに、看護婦に呼び止められた。 「後にしろぉぉぉ」 間髪入れずに、富山の鼻フックが看護婦の両鼻の穴を捉えた。 寸分の狂いもなく、的確な攻撃だった。 「せ、先生、もしかして、私のこと・・・・・・」 看護婦は顔を赤らめたまま、立ち尽くしていた。 診察室は、とうに通り過ぎていた。 オペ室も通り過ぎた。 霊安室も。 一体、自分はどこまで連れて行かれるのか。 青志の不安は、最高潮に達しようとしていた。 「あ、あのぉっ」 「しっ。生臭い、静かにして」 富山は青志の方へ振り向くなり、鼻を摘んで、顔を歪めた。 青志はより、わけがわからなくなった。 そんな青志を他所に、富山はどんどん階段を登っていった。 青志も遅れまいと、ついて行った。 富山が急に歩くピッチを上げた。 富山と青志との距離が、一気に空いた。 鬱陶しい奴をまくようなペースだった。 青志も喰らい付いた。 病み上がりとはいえ、体力には自信があった。
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