青魚

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「はっ、はっ、ふっ、はっ」 額に汗が滲んだと思ったら、滝のように流れてきた。 正真正銘のイカが来た。家に。 どうやってここがわかった? 交通手段はなんだ? 徒歩か? 自転車か? 青志の頭の中で、目まぐるしいほどの思考が巡った。 これまでにも、イカと呼ばれるものが来たことはあった。 それはイカの耳を被った友人だったり、猿だったり、妹の梨沙(りさ)だったり。 謂わば、紛い物だ。 ただの人間やそれに近いものだ。 だが今回は違った。 身長も梨沙よりも、頭一つ分は大きかった。 「勘弁してくれよ」 すっかりと神経をすり減らした青志は、ミネラルウォーターを鼻から入れ、口から出した。 「・・・・・・くさっ」 ミネラルウォーターが鼻を通過し、口から出た時、磯臭さ、生臭さが鼻を刺した。 どうにか落ち着きを取り戻そうとすればするほど、そわそわした感じが増していくようだった。 ぴーん、ぽーん インターフォンが鳴った。 ちょうど今日は、オンラインショップで仕入れたコーヒー豆が届く日だった。 「はいー」 インターフォンのモニターを確認することなく、ドアノブに手を掛けた。 「あのー、これなんとかなりませんか」
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