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「いや、やっぱり受け取っときますけん」
青志の顔色を伺ったのか、ヒトデが短い手を伸ばした。
青志は泣きそうだった。
ヒトデに気を遣わせる人間が、一体世界中を探してどこにいるのだろうか。
「はい・・・・・・」
ぶっきらぼうに、パスポートをヒトデに渡した。
渡すとき、手と手が少し触れ合った。
思いの外、ざらざらしていて、青志は悪寒がした。
「あ、あれ?」
パスポートを渡して、青志は気がついた。
「手が」
「ああ、生えてきよったですね。そう言やあ、僕ら再生するんでしたわ。ははっ」
うっかり、というように、手を人間で言うところの、頭の位置に持っていった。
「そんなら、えらい長いことお邪魔しましたな。ほんじゃ」
手を上げると、ヒトデはゆっくりと、のそのそと帰っていった。
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