青魚

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鈴木青志(すずきあおし)は、怪訝そうな面持ちだった。 「顔、白いですよ。大丈夫ですか?」 そりゃそうだ。 イカだからね。 「はい。ちょっと慣れない環境なもんで。ご心配をおかけします」 青志の家の玄関にて、イカは立ち尽くしていた。 「右足の下から5つ目の吸盤ですね。最近調子悪くて」 「そ、そうなんですね」 青志の目が泳いだ。 イカが家に訪ねてきたことは、過去に何回かある。 だが、吸盤の不調を訴えるイカは初めてだった。 「ダメですか?」 イカの生々しい視線が、青志の恐怖心を煽った。 「な、何が・・・・・・?」 「直してくれますか?」 聞かずともわかっていた。 そう来ることは最初から。 「他、当たってくれないか?」 青志は冷たく言い放った。 それから、言葉が交わされることもなく、イカは肩を落とした。 「失礼しました」 イカは吸盤を、きゅぽんきゅぽん言わせながら、生臭さを残し、去っていった。
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