3人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
お話しのはじまり:ハイジャラテー
オモホイの国は寒い。
北極の近くにあるためだ。
夏は雪がなく涼しい。冬は雪が多い。ヒゲも髪も凍るほど寒い。
私は昔話研究家としてオモホイの国に来ている。
オモホイの人たちは独特の歌、法律、文化をもつ。
オモホイの人たちは昔話を聞くのが好きだ。昔話はシャーマンが良く知っている。
シャーマンは村の占い師である。それだけでなく、彼らは昔々からのお話しを次の世代へ伝える役目もある。これを昔語りというそうだ。
私はその家にお邪魔し、昔語りを記録させていただいた。研究結果を私の国に持ち帰るつもりだ。
冬。寒い青い夜。シャーマンの家の囲炉裏は赤く燃えていた。
三本琴を世話人が部屋の隅でポロン、ポロンとまばらに奏でる。
木製の琴のつるつるした表面にゆれる赤い火がぼやっと写る。
ぱちっ、ぱちっ、と火が散る。
やがて、一人の老いたシャーマンが静かに口を開いた。
=======
このお話しは私のおばあさんから聞いた。
おばあさんの名前はハイジャラテーといった。私の名前と同じだ。
おばあさんもそのまたおばあさんから聞いた。
そのおばあさんのおばあさんもハイジャラテーという名前だった。
むかしの事は誰も知らない。
けれど、おばあさんたちの残した物語だけが昔々のことをよく知っている。
だから、なぜ王様が偉いのか。なぜ兎の耳が長いのか。よく聞いてごらん。
最初のコメントを投稿しよう!