10話 テスト期間最終日

1/1
前へ
/20ページ
次へ

10話 テスト期間最終日

 最期のテストは、国語。  とりあえず、気持ちよく終われた感はある。  自己採点でも、それほど悪くなさそうだし、ちらりと見えた西尾くんの顔も、手応えがありそうな、そんな顔つき。  生徒玄関に着いて、靴を履いていると、 「おい」 「……ひっ!」  西尾くんだ……。  いつもスマホで指示を出されていたから、不意打ちを食らった。 「待ってろよ」  遠くを見ると、麗愛菜と、その取り巻きが見えた。  西尾くんに唐突な呼び出しだがあったようだ。  私の返事を聞く間もなく、西尾くんはすぐに麗愛菜の元へと向かっていく。  ……背中越しにわかる。  苛立ってる。  玄関の邪魔にならないフチに腰を下ろして、ぼーっと外を眺めてみる。  テストが終わったと浮き立った生徒たちばかりだ。  暗い顔の生徒はいないんじゃないだろうか。  ……いや、いるかもしれない。  でも、そんなこと、おくびも出さずに笑顔を作っているのかもしれない。 「めんどくさ」  肘をついた頬をゆがめながら、私は呟いていた。  腕時計を見る。  西尾くんが声をかけてきてから5分ぐらいだろうか。  きっとここから、泣き落としと、取り巻きたちのヤンヤヤンヤが始まるのだろう。 「やっぱ、めんどくさ」  私はメッセを入れておく。 『先に行って、虎太もふっとく』  よいしょと腰をあげると、今日は普通の天気。  晴れていて、雲が多い。  だんだんと暖かさが寄せてきている。  梅の花も、日当たりのいい場所だと見かけるようになってきた。  今日は、いい散歩日和だ。  ───そう思っていられたのは、学校から出て、20分も、保たなかった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加