5人が本棚に入れています
本棚に追加
10話 テスト期間最終日
最期のテストは、国語。
とりあえず、気持ちよく終われた感はある。
自己採点でも、それほど悪くなさそうだし、ちらりと見えた西尾くんの顔も、手応えがありそうな、そんな顔つき。
生徒玄関に着いて、靴を履いていると、
「おい」
「……ひっ!」
西尾くんだ……。
いつもスマホで指示を出されていたから、不意打ちを食らった。
「待ってろよ」
遠くを見ると、麗愛菜と、その取り巻きが見えた。
西尾くんに唐突な呼び出しだがあったようだ。
私の返事を聞く間もなく、西尾くんはすぐに麗愛菜の元へと向かっていく。
……背中越しにわかる。
苛立ってる。
玄関の邪魔にならないフチに腰を下ろして、ぼーっと外を眺めてみる。
テストが終わったと浮き立った生徒たちばかりだ。
暗い顔の生徒はいないんじゃないだろうか。
……いや、いるかもしれない。
でも、そんなこと、おくびも出さずに笑顔を作っているのかもしれない。
「めんどくさ」
肘をついた頬をゆがめながら、私は呟いていた。
腕時計を見る。
西尾くんが声をかけてきてから5分ぐらいだろうか。
きっとここから、泣き落としと、取り巻きたちのヤンヤヤンヤが始まるのだろう。
「やっぱ、めんどくさ」
私はメッセを入れておく。
『先に行って、虎太もふっとく』
よいしょと腰をあげると、今日は普通の天気。
晴れていて、雲が多い。
だんだんと暖かさが寄せてきている。
梅の花も、日当たりのいい場所だと見かけるようになってきた。
今日は、いい散歩日和だ。
───そう思っていられたのは、学校から出て、20分も、保たなかった。
最初のコメントを投稿しよう!