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前編
ヘラがラケットで打ち返した球がゼウスの顎からアッパーするようにヒットする。ゼウスは仰向けに倒れて白目をむいてぴくぴくしていた。神だから死ななかった。しかし、ブロンドいい男が台無しだ。
白髪ショートヘアの医神、アスクレピオスは蛇の絡んだ杖がトレードマークだったが、今日はそれを模したペンダントを着けて、ラケットを持っていた。美しく温和な彼が同世代の彼女をなだめる。
「ヘラ、彼の浮気はもうビョーキなんだ。許してあげなよ」
「私、怒ってなんかないもん」
ヘラはギリシャ若人テニスサークルで汗を流した後、更衣室で着替えた。彼女は栗毛を頭の高いところでお団子にしていたが、隣のヴィーナスは、ブロンドのセミロングを下ろしていた。ヴィーナスは言った。
「ヘラ、キャラぱん卒業しなよ」
「だって好きなんだもん」
ヘラは言い返す。ヘラのパンツは赤地に白抜きで巨大なパンダキャラクターが描かれていた。
ヘラは着替え終わって飲み物を買いに行った。そこへ短髪のヘラクレスが明るく話しかけて来る。
「ヘラ、今日赤いパンダぱんつなんだって?」
「誰が言ったの!?」
「エコーから聞いたよ」
ヘラは事実を確認するため、サークル内を歩いてエコーを見つけ出した。長い赤毛のエコーは、女性ではなく、よりにもよって成人男性相手にペラペラまくしたてていた。
「ヘラは今日、赤いパンダぱんつなんだって!」
「なるほどね!」
聞き手がもっともらしく唸っている。ヘラはキレた。
「エコー、お前のようなおしゃべりは、相手の言葉を繰り返すしかできないようにしてやる!」
そうしてヘラの呪いにかかったエコーは、自分から相手に話しかけることができなくなってしまった。
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