じーじのトラック

　夜のご飯は、きゅうりとナスを使うのかな？

　ママとばーばのお話から、そんなことを考えながら、パパとお部屋に入ると、お線香の匂いがした。

　このお部屋は、いつもお線香の匂いがする。あたしのおうちとは違う匂いだけど、なんだかこの匂いを嗅いでいると、ふわんとした気分になるから、あたしは、このお部屋の匂いが好き。

　いつも通りのお部屋の匂い。でも、お部屋の中は、いつもとちょっと違うみたい。

「パパ、これなぁに？」

　ほんわかと光ながら、絵がくるくると回っていて、まるで万華鏡のようなそれを見つめながら、あたしは、パパに聞いてみた。

　パパは、じーじや、おおじーじ、おおばーばの写真に手を合わせてから、あたしのそばへ来ると、一緒にくるくると回る絵を見ながら、教えてくれた。

「これはね、回転灯篭って言って、じーじたちが迷子にならないようにするための目印なんだ。じーじたちに、お家はここですよって教えてるんだって」
「じーじは大人なのに、迷子になるの？」
「じーじたちは、ものすごく遠くから１年に１回帰って来るだけだから、もしかしたら、迷子になっちゃうかもしれないだろ。だから、念のためだよ」