お礼

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お礼

「鈴麗様、まずはご回復大変喜ばしく思います…これは私が折った体調回復祈願の千羽鶴です。よかったら…」 千羽鶴を差し出すと… 「まぁ…素晴らしい飾り物をありがとうございます」 「こちらに置いておきますね」 動けない鈴麗様に変わって近くの机に置いておく。 「では私からも…王蘭様、命を救って頂いたそうね…ありがとうと言うべきなんでしょうが…私の事は見捨ててよかったのに…」 鈴麗様の蚊の鳴くような声が弱々しく聞こえる。 「やっぱり…鈴麗様はご自分から命を絶とうとなさったんですね…」 「ええ、あなたもそうなのかと思って…それで話を聞いてみて確実に死ねる方法はないか尋ねようと思ったのだけど、あなたはあれは事故だったと言うから…」 「すみません…私も…本当は命を絶とうとしたのですが思いとどまりこうやって舞い戻って来ました」 「そう…でも私は…」 鈴麗様は悲しそうな顔で外を見つめる。 「もしよろしければ理由をお聞きしても?」 鈴麗様はしばらく無言の後、ボソボソっと話し出した。 「私、好いてる方がいるのです…その方は王宮に勤めていて…でも私が婚姻出来る年になると、お父様にこの後宮に無理やり入れられて…あの人にもう二度と会うことが出来ない…それと皇帝様に身を捧げないといけない…本当なら名誉ある事なのでしょうけどね…」 「なるほど、惚れた相手と結ばれる事ができないならもう生きてる意味がないと?」 「ええ…」 「鈴麗様は馬鹿ですね」 「え?……今…馬鹿と言いました?」 鈴麗様は言われた意味が分からないのか大きな瞳をまん丸にしてこちらを見ている。 「そんな事で命を絶つなんて馬鹿です!この世には生きたくても命を落としてる人もいるのですよ…それに鈴麗様が自ら命を絶ったなんてその方が知ったらどう思われると思いますか!」 「で、でも彼はもう私の事を呆れているかも…彼が王宮に行く時に…思い切って気持ちを伝えたの…彼も私を大切だと言ってくれたのに…その思いに答えられなかった」 鈴麗様の美しい瞳からポタポタと雫がこぼれる。 私はゆっくり近づいて鈴麗様の涙を拭った。 「その彼は鈴麗様が後宮に入ってことを知っているのですか?」 鈴麗様はプルプルと首を横に振った。 「わからない…何度もお父様に彼への手紙を出しているのだけどあの女官長が渡してくれてるとは思えない…」 ああ、あのムカつくおばさんか… ヒステリックな感じで人の話を聞かなそうな雰囲気だった。 「その、鈴麗様のお相手はここに勤めているのですよね?」 「ええ、王宮で兵士として…とっても強い人だったから…今頃は兵長にでもなってるかしら」 彼に話をする時だけ鈴麗様の顔が柔らかくなる。 本当に彼の事が好きなのだろう…羨ましい… 私もこんな恋がしてみたい。 恋する鈴麗様を羨ましく見つめていた。
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