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記憶
「凛々、こちらに…」
王蘭は頭を下げ続ける凛々を自分の方へと呼んだ。
「は、はい…」
凛々は顔を下げたまま王蘭の手の届く所まで来た。
見ればその肩は小刻みに震えている、よく見ると凛々は幼く現代でいう中、高校生くらいに見えた。
「凛々、あなた年は?」
凛々はなぜそんなことを…と言う顔をしたが素直に答える。
「十三にございます」
「十三!!」
嘘でしょ!中学生じゃない!
それなのにもう死を覚悟しているのか…
「凛々、あれは私が悪いのよ。自分で足を踏み外してしまったのよ…つい花に見とれてね」
凛々にそう言うと驚いた顔をして私を見上げた。
なので笑ってウインクする。
「だからずっと看病してくれてありがとう、私にはあなた達しかいないのだからこれからもよろしくね」
「王蘭…様?」
驚く凛々を無視してもう一人は何処かと探す。
「あれ?もう一人居たわよね?」
聞けばいつ目覚めてもいいように食事の用意をしてくれているとの事、そんなことを聞いたら余計にお腹が空いてきた。
くぅ~
お腹がなると凛々がクスッと笑いハッとして顔を青ざめた!
「も、申し訳ごさいません」
再び床に頭をつけた。
「いいのよ、それよりお腹空いちゃった!凛々早速ご飯お願い出来る?」
「は、はい!ただいま!」
凛々は慌てて立ち上がると駆け出そうとする!
「あっ!待って!」
慌てる凛々に声をかけると
「なんでしょうか!?」
凛々が急いで止まって振り返った!
「そこ…桶の水で濡れてるから気をつけて…」
凛々が水浸しにした床を指さすと…
「あああ!すみません!すみません!すぐに片付けます」
凛々は慌てて駆け出し、そこ先ではまた何かを倒した様な音が聞こえる。
「あーあ、ああならないように声をかけたんだけど…」
私は苦笑してパサッとベッドに仰向けに倒れ込んだ。
見慣れてるけど初めて見るような天井を見上げる。
手を伸ばして自分の手を見つめると…そこには王蘭の手があった。
葵の腕はもう少し黒かったが王蘭の肌は白く傷もなく綺麗な腕だ。
確かに王蘭として過ごした記憶があるがそこに上書きされるように葵としての記憶が重なる。
「私は王蘭、でも葵…だった。そしてここは後宮…なるほどね」
これは転生って言うのかな?
葵は死んだ、そして王蘭も一度死んだ。
ここからはニュー王蘭として生きていかないと…
これからの事を考えると頭が痛くなったが…
ぐぅ~
頭は痛くても腹は減る。
まぁとりあえずはご飯を食べてから考えるか…
王蘭はパタッと手を下ろした。
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