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「なんだろう・・」
音がするほうを目で探していると、川沿いに沿って随分先まで植えてあるレッドロビンの真っ赤な葉っぱの中に、だれでも気が付く黒い玉が埋まっていた。
どうもそれが動いている音らしいのだが、ぱっと見たら赤一色のキャンパスに、ボーリングの玉を埋め込んだ状態というのが一番いい表現に思えた。
おむすびを開封する手を止め、ゆっくり近づいてみるとそれは黒のボールだった。ゴムかビニール製のようで、黒光りしていたから遠目にボーリングの玉に見えたらしい。
わかってしまえばなんてことない、子供の遊び道具のボールが木の茂みにはまったまま放置されているということ。
「持って帰るのを忘れたんだな。こんなに目立つのにねぇー」
呆れるとともに、原因がわかった途端僕はホッとした。
ベンチの上にはおむすびも置きっぱなしだし、「そうそう、シャケのおむすびが・・」と、戻ろうとしたら、
「シャケ!?」
・・・?
「シャケのおむすびだって!」と、バサバサ。ハマっていたはずのボールは、まるで後ずさりするように動いて出てきた。
「うわぁーつっ、なに!!」
ボールだと思っていた物には手も足も顔も耳も、尻尾まであった。
これは・・? まん丸なクマ? なのか・・・。
斜め越しに、僕を見ている。
お互いが数分固まっていたけれど、戸惑いながら「いま喋ったのは、君なのかな・・?」なんて、おもちゃに喋っている自分が自分で怖い気もしたのに。
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