1人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、あの体型のせいでクマの転がりは止まらず、勢いよく土手を転がり、川に落ちて流されている。ダッシュで追い掛けたけれど流れには追いつけず、クマはアップアップしながらなにか叫んでいるが、聞き取れない。
あの様子では怒っているとしか思えなかった。
そしてすぐに見えなくなった。
暗くなるまで歩き回り、どこかに引っ掛かっていないか探し回ったけれど、見つけることは出来ず、罪悪感と疲労感でベンチにコンビニの袋を置いてきたことも忘れていた。
助けるつもりがこんな事になるなんて・・。クマ、僕のせいでごめん。
しかし、僕は知らなかった。
あの時、クマはおむすびを頬張りすぎてのどを詰まらせていた事を。だから、川に落ちたことで水を飲んで助かり、流されていた途中で老夫婦に拾われ、今は毎日シャケおむすびを食べさせてもらって幸せに暮らしていた。
そして、あの時クマは怒っていたのではなく「話していたのは、その女の子じゃないですよー」と叫んでいた。
女の子は女の子で、あの後ママにあのお菓子をおねだりして、買ってもらって大喜びしていたことを。
そして、僕はというとー
次の日の日曜日、
「今日はもっと下流まで行ってみるかな・・」
あの日から、時間の許す限りクマを探して歩いてる。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!