01 普通でいたい

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 そんな事に気がついても毎日は過ぎていく。気がつけば三年目の社会人生活。  堅実に仕事をこなし、新しい仕事にもチャレンジして来た。内勤営業の私は、外回りの営業担当を何人も同時に面倒を見る。外で戦う営業のフォローに失敗もカバー。そしてステップアップしたいと思っている。  ステップアップって言っても別に課長になりたいとか部長になりたいとか、そんな事ではない。  それなのに何故だろう。評価ランクもここ一年同じだし。ステップアップしたくても、出来ると思っているのに──直属上司からは今ひとつ評価がもらえない。『普通』にステップアップしたくてもどうもそれは駄目みたい。  つまり自分の考える『普通』からもほど遠い底辺へ近づきつつある。そんな『普通』ですらいられない私のストレスは恐ろしく溜まっていく。『普通』ですらいられない惨めな私。それはそれは劣等感やら日々の仕事は人間関係のストレスに加えるとすさまじいものだ。  一週間が終わって私の心のバケツ一杯になったストレスをどう発散するかだけど──  ◇◆◇ 『ヤダ、ヤダ、イッちゃうイッちゃう~』 『あっ、はぁ……ほら、舐めとって掃除しろ』  パソコンに繋いだヘッドホンからはいつもの様に悩ましいセクシー女優の声。  お腹がポコンと出ている男性が女性の中で達したら、次に女性の顔に自分の性器を擦りつけ舐める様に促す。女性は涙目で苦しそうに男性器を咥える。そして別の男性が女性の後ろに回り挿入をする。  私が見ているのは男性向けのアダルト動画。最近はずいぶん便利になったものだ。お店に行かなくてもネットで借りたり購入したりして見る事が出来る。 「ゴクッ」  私はラグの上に座り、缶チューハイを飲んだ。この一口で缶チューハイが終わってしまった。だから私は動画を一時停止し、新たな缶チューハイを求めて立ち上がる。 「二本連続で見るのって結構疲れるな。でもさっき見たのはいまいちだったのよね」  私は一人暮らしの部屋で呟いた。  そう。私、直原 那波は普通どころか底辺に近づきつつある自分を嫌というほど自覚して以来、そのストレスをどう発散するか? という課題にぶつかりある事を始めた。  それは、週末にアダルト動画を見てストレス発散する事だった。 (どうしてこうなったのかな? 自分でも駄目な趣味だと思うわ。でもこれがいいのよね~)
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