2.ウイルスでゾンビ化現象

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2.ウイルスでゾンビ化現象

 今回新たに使用されているワクチンは、遺伝子を書き換えてしまうんで、大変危ないですよ。という噂話があるそうですね。  ……すみません、笑ってしまいました。  「アンナチュラル」というドラマで、石原さとみさんと市川実日子さんが「ウォーキングできないデッド」と笑い合っていたシーンを思い出しました。次世代ワクチンで遺伝子を書き換えられるとは、死体が歩き回るほどあり得ない話です。その根拠も含め、この次世代ワクチンについて詳しく書いていきたいと思います。  この対コロナ用に導入された次世代ワクチンには大きく二つの種類があるようです。それがモデルナ、ファイザー製のmRNAワクチンと、アストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンです。とは言え、やってることはあまり大差なく、RNAという物質をどう入れるかの違いくらいです。  ここで一つ謝っておきます。次世代ワクチンについて書くと言いましたが、前提条件が長過ぎたので何ページかに亘って書きます。ごめんね。  さて、まず以ってRNAとは何ぞや、てとこから始めますね。  RNAとはRibonucleic acid(リボヌクレオチド・アシッド)の略で、歴とした物質の名前です。DNA(|Deoxyribonucleic acid《デオキシリボヌクレオチド・アシッド》)と同じく遺伝物質で、構造も極めて似ています。それもその筈、そもそも生物誕生に際し、先に生まれたのがRNAだと言われていて、その後DNAに進化したとされているからです。DNAの頭に付いている「デオキシ」とは「オキシ」つまり酸素が、「デ」つまり一つ外れているということを表していて、要はRNAから酸素が一つ外れたものがDNAということになります。  ちょっと待って?じゃあ、ほぼ同じものじゃん。やっぱり遺伝子書き換えられるんじゃ…と心配した方、安心して下さい、穿いてますよ(何を)。  生物というのはとてもよく出来ています。例えば砂糖の主成分である「グルコース」、知ってますか。これを、多くの人が眠たくなる化学式で書くと「C6H12O6」です(ほんとは数字はそれぞれの文字の右下に小さく書くんですが、仕様のためご勘弁下さい)。ここからHとO、つまり水素と酸素を一つずつ取ると全く別の物質になります。それが「セルロース」、紙の主成分です。  ヒトの体は「グルコース」は分解できても「セルロース」は分解できません。面白いですね。ほぼ似通ったものなのに分解出来るものと出来ないものに分かれてしまうんですから。…因みに砂糖も食物繊維も吸収できるって人、居ないですよね。大丈夫ですね、はい。  例えが長くなりましたが、RNAとDNAもこれと似たような形で扱われます。  まずRNAとDNAは性質が異なります。DNAと言われれば何か、螺旋階段みたいなのが思い浮かぶと思いますが、あれはDNAが二本くっついている状態を表しています。重要なのは梯子の部分ではなく、縦に延びている方。それがDNAです。あの螺旋階段みたいな状態のDNAは二本鎖と呼ばれます。基本的にDNAはこの二本鎖の形を取りますが、RNAは一匹狼、二本鎖にはあまりなりません。また、進化した結果でしょうか、DNAの方がRNAよりも安定している、つまり分解しにくくなっています。  更にそれぞれを形作っている物質が少し違います。DNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という四つの物質だけで構成されていますが、RNAの場合、チミンの代わりにウラシル(U)という物質が使われています。  ここまで来ればもうお分かりだと思いますが、DNAと RNAは同じく遺伝物質なのですが全くの別物です。ヒトの設計図であるゲノムはDNAで出来ています。そこに幾らRNAを入れた所で遺伝子が書き換えられるなんてことは起こり得ません。ものが違いますから。  なるほど、遺伝子が書き換えられることはないってことは分かった。けどそれなら、どうしてそんなものを入れると免疫力が付くんだい?  そうですね、それについては次のページに書きますね。
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