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 店の中は、いろんな布が巻かれて棚に入れてあった。 「すげ~な……」 フィルは、その数に圧倒されていた。  ススムとトムは、店のやり手そうな女主人と何やら話しこんでいる。 「ススム様に、あんなかわいい娘がいたなんて……良いですか~絶対逃がしたらダメですよ! あの娘は、いわば原石です。磨けば光ります。しかし、光らすのは、あなた様次第です」 ススムは、ちらっとフィルを見て 「なるほど……」 っと、頷いた。 「セル様……あまりススム様をのせないで下さい……」 トムは、お財布係りなのでハラハラして聞いていた。 ススムは、ズラリと布が並ぶ棚を見渡し、 「そしたら、あのふわりとした淡いいろの絹と、何かあわせて難着か造って頂きたい。あと、頼んでいたもの出来てますか?」 「出来てますとも。」 店主のセルは、そう言って小さな木箱をススム様に渡した。 セルは、ススムの耳元で 「これは、ここぞと思う時に渡すのですよ」 っと、ささやいた。 「セル様、わるじえしてませんか……?」 トムは、訊く 「まさか! ただ、少々私の意見をと……」 セルは、フフッと笑った。 「フィルさん、何か気に入ったものは、ありましたか?」 ススムは、フィルがじっとみつめている服を見た 「踊り子の衣装ですか? これ……」 フィルは、 「イヤ、母が踊り子だったんだ」 と、語る。 「欲しいですか?」 フィルは、顔を横にふり 「まさか……似合わないよ。私には…… それより、お茶して来て良いか?パオ連れてそこに……」 フィルは、向かいにある茶屋を指さして言った。 「わかりました。先に休んでて下さい」 フィルとパオは、先に店を出て茶屋に入った。 「なんだか、陰がある娘さんですね~」 セルは、言った。 「セル様、あれもお願いします。新しく一着仕立て下さい」 「承知致しました」 こうして、ススムもトムも店を後にした。
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