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「フィルさん……」 はぁっと、自分の責務用の机でため息をつくススム。責務室には、フィル、ススム、トム、パオがいる。 フィルは、ススムの座る机の手前にあるテーブルを挟んだソファーに腰を落とし、オレンジの香りのついた果汁水を一口飲み 「なんだ…… ちゃんとお前の婚約者ぽく演じただろ?」 っと、しれっと言ってのけた。 ススムの隣に控えているトムの眉間にシワがよったのは、あたり前のことであるが、落ち着いて自分の主の次の言葉を待った。 「やりすぎです……」 「そうか? 私は、盗賊だが嘘は言ってないぞ」 フィルは、コップの中にある氷をカラカラ鳴らしながら 「私は、正真正銘の巫女さまの娘で、もちろん父親は、悪魔ではない。だいたい、父親は、悪魔などと変な噂を流したのは、人間だ」 っと、言った。 「それを、信じるとして父親は、いったい誰ですか?」 ススムは、微妙な表情をして顔をフィルに向けた。 「それは、言えないな……」 フィルは、そう言って立ち上がりさっさと自室に帰ろうとした。 「なら、質問を変えますが父親は、人間ですか?」 「いや……」 フィルは、カチャリとドアノブを回して部屋から出ていった。 「王子、フィルの話し誠だと?」 トムは、訊いた。 「なんとも言えませんが、そのことについて嘘をつく理由も見つかりませんし、フィルさんさっき仕立て屋で母上は、踊り子だったと言ったんです……」 ススムは、テーブルにあった書類を手に取り目を通すと、それをトムに手渡してやった。 「あやつの資料ですか……」 トムの、それに目をやると 「価値の高いお宝ばかりずいぶん盗んでますね。 本当ならそっこうで打ち首ですが……これまで、一度も捕まってないのは、やはり人間の能力ではなさそうですよね」 っと、自分の判断を口にした。 「お前も、そう思うか。それに、資料をみる限り一人も傷つけてないようだ。 フィルさんは、何かとんでもない隠し事をしてるような気がします。 僕は……」 「王子、素がでてます……」 トムは、真剣な顔をして言った。 「お前と、二人の時くらい良いだろう……」 ススムは、口をへの字にして言った。 「ダメです……」 主よ、もっと威厳をもとう。 とでも、言いたげな顔でトムは、ピシャリとススムに言ったのであった…………――。
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