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03
「フィルさん……」
はぁっと、自分の責務用の机でため息をつくススム。責務室には、フィル、ススム、トム、パオがいる。
フィルは、ススムの座る机の手前にあるテーブルを挟んだソファーに腰を落とし、オレンジの香りのついた果汁水を一口飲み
「なんだ…… ちゃんとお前の婚約者ぽく演じただろ?」
っと、しれっと言ってのけた。
ススムの隣に控えているトムの眉間にシワがよったのは、あたり前のことであるが、落ち着いて自分の主の次の言葉を待った。
「やりすぎです……」
「そうか? 私は、盗賊だが嘘は言ってないぞ」
フィルは、コップの中にある氷をカラカラ鳴らしながら
「私は、正真正銘の巫女さまの娘で、もちろん父親は、悪魔ではない。だいたい、父親は、悪魔などと変な噂を流したのは、人間だ」
っと、言った。
「それを、信じるとして父親は、いったい誰ですか?」
ススムは、微妙な表情をして顔をフィルに向けた。
「それは、言えないな……」
フィルは、そう言って立ち上がりさっさと自室に帰ろうとした。
「なら、質問を変えますが父親は、人間ですか?」
「いや……」
フィルは、カチャリとドアノブを回して部屋から出ていった。
「王子、フィルの話し誠だと?」
トムは、訊いた。
「なんとも言えませんが、そのことについて嘘をつく理由も見つかりませんし、フィルさんさっき仕立て屋で母上は、踊り子だったと言ったんです……」
ススムは、テーブルにあった書類を手に取り目を通すと、それをトムに手渡してやった。
「あやつの資料ですか……」
トムの、それに目をやると
「価値の高いお宝ばかりずいぶん盗んでますね。 本当ならそっこうで打ち首ですが……これまで、一度も捕まってないのは、やはり人間の能力ではなさそうですよね」
っと、自分の判断を口にした。
「お前も、そう思うか。それに、資料をみる限り一人も傷つけてないようだ。 フィルさんは、何かとんでもない隠し事をしてるような気がします。 僕は……」
「王子、素がでてます……」
トムは、真剣な顔をして言った。
「お前と、二人の時くらい良いだろう……」
ススムは、口をへの字にして言った。
「ダメです……」
主よ、もっと威厳をもとう。
とでも、言いたげな顔でトムは、ピシャリとススムに言ったのであった…………――。
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