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 フィルは、自室に戻ると机に置いてあった本を手に取りそれを読みはじめた。 「さっきの話は本当なのか?」 パオは、机によじ登ると訊いた。 「嘘に聴こえたのか?」 本をパタリとしめ置いてからフィルが言った。 「いや……本当の事に聴こえたからこそ腑に落ちない。なぜ、巫女の娘であるお前が盗賊などしておるのだ? 普通であれば、母と同じく巫女になるであろう……」 「……母は、殺された」 「なに?!」 「いや、殺されたと言うより無残に喰い殺された……悪魔の大魔王に魔力の蓄えとして。当時五歳だった私は、母に、口に布をいれられそれから口に猿ぐつわをされ、樽に隠された。私は、母の喰い殺されているむごったらしい音を聴きながらその場を堪えた。その後は、人間の盗賊に拾われまぁ、その育ててくれた盗賊のオヤジも病で五年前に亡くなった」 フィルは、思い出したくもなかったのであろう拳をぎゅっと握りしめ一気に話し終えると、ふぅ――と息を吐いた。 「聞かなきゃ良かった……」 パオは、言った。 「そう言うことでしたか」 扉の向こうから声がした。 開くとススムとトムが立っていた。 「悪趣味な王子さんだな……」 フィルは、自室のソファーを進め二人を座らせ、自分とパオもテーブルを挟んだソファーに腰掛けた。 「他に、訊きたいことは?」 フィルは、自分についてくれている侍女にお茶を頼むとそう言った。 「山ほどありますが一つだけ……世界伝が欲しいのは、復讐の為ですか?」 ススムは、難しい顔をして訊いた。 「……そうだ」 フィルは、そう応えると侍女の持ってきたお茶を一口すすり甘い香りのしているチョコ菓子を口に入れた。 「そうですか」 ススムは、そう言うと立ち上がり 「失礼しました。すみません、盗み聞きして……」 っと、言ってトムを連れ部屋から出た。 ススムとトムは、責務室に戻る。 「王子……」 トムは、色々王子に言いたげだったがススムが先に口を開いてしまい 「トム、調べて頂きたいことがあります。魔境の大魔王について、なるべく詳しい資料とあと、至急そこへ物見兵を何人か向かわせ色々調べさせてきて下さいますか?」 っと、言ったのである。 「御意……」 トムは、そう言うと責務室から退出し自分の指揮をしている兵達に指示を出しに行った。 ススムは、部屋の大窓を開けテラスに行くと、 フィルのいる部屋の塔窓を見つめ 「あなたの父親は、大蛇ですか?……」 っと、静かに言ったのである。 そうなると、フィルは、巫女さまと大蛇との子供…… この国の神様と同様じゃないですか……あなたは それは、風がススムの髪を優しく撫でる、真夏の夜の事であった……
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