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ドーム型をした建物の中は、広々としており、何故だか上にはロープが無数に張り巡らせてあった。
中では、兵の男衆達がそれぞれの武器を持ち鍛練に勤しんでいる。カンッ!キンッ!など、どくとくな金属音が耳をさす。
フィルは、自分の身長よりも少し高い位置にはってあるロープを持ち、
「これは、何に使うんだ?」
っと、ススムに訊いた。
「これはですね~まぁ、ここの上級者むけに造ったものなんですが、後でお見せしますね」
そう言ってススムは、にっこりと笑うと、建物のちょうど中央にいる、矛をもち指示を色々だしている兵の中でもトップクラスそうなオヤジに声をかけた。
「これは、ススム殿下、お待ちしておりました。トム小姓も。後ろの方は確か……フィルさまにパオさまですね。わたくしは、この兵の隊長をつとめております。ゼノスと申します」
っと、頭を下げた。
『ススムの婚約者とはいえ、私などに敬語などを使いさらには、様づけするとは、こいつなかなかみる目があるなぁ隣のこいつと違って……』
フィルは、トムを横目でチラリと見つめへって顔をしていやな笑いをした。
トムは、眉間に青筋をだしていたがススムが
「久しぶりに手合わせ願いますよ、トム……」
っと、練習試合を申し込んだのでトムは、
「つつしんでお受け致します」
っと、ニヤリとして言った。
「何だか二人とも楽しそうだな、俺もこんな身体でなければやりたかったくらいだ悪魔のさがだな……」
パオは、己の子像の身体を見てからススムとトムを羨ましげに見た。
審判は、先ほどの兵隊長さんが勤めるらしい。
周りには、兵のギャラリーでいっぱいになった。
審判が手を上げると
あたりがシーンと、静まりかえった。
『たかが、王子と小姓の試合に何をそんなに熱心になってるんだよ、こいつら……』
「はじめッ!!」
審判が手を振り落とすと
どうじに双方の矛先がぶつかりあった!
「おぉ――!!」
っと、兵達は、歓声をあげる。
トムが先ほどのロープへ器用に登り、そこから突きをススムへと繰り出した。それを、さっとかわしたススムも、跳躍すると別のロープへ足をかけぐっと膝を折り曲げロープがきしんだその勢いのまま、トムにむけて一撃をいれた。
「一本っ!」
審判が手を上げる。
どうやら、勝負あったらしい。
練習用の矛だとは、いえあたれば大怪我をするので矛先は、タオルでぐるぐる巻きになっていた。
なぜ、ぐるぐる巻きかは、今わかったが……フィルは、
「猿か……こいつら……」
っと、呆れてススムとトムを見た。
「この芸当は、ここの兵は、皆出来るのか?」
っと、パオが良い質問をした。
さすがは、中身がオッサンだけあると、フィルは、隣で感心をした。
「いや、我らでもなかなかあのロープへ登り、かつ矛を振り回すなどの芸当は、なかなかしようとして出来るものではありませんよ。幼き頃より、鍛練をおしまず鍛えぬいた殿下と小姓との一つの結果でしょうなぁ」
っと、ゼノスはしみじみとパオに語った。
オッサンどうしなかなか意見があうのやも知れない。
トムがロープからおりてきて
「また、負けた……」
っと、呟いた。
「そんなに、あいつは、強いのか? 王子様なのに……」
フィルは、不思議そうにゼノスに訊いた。
「殿下の戦闘センスには、我々もなかなか頭が上がりませんよ」
ゼノスも困り顔で言った。
ススムは、まだロープにあがったままで
「フィルさん、一戦どうですか?」
っと、息もあげずにフィルに手を差し出したのであった…………
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