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 今の動きして息も上がらないのかよ…… フィルは、差し出されているススムの手を握ると 自分も器用にロープに上がってみせた。 「簡単そうに見えたがこの上で戦うのはけっこう大変そうだ……」 フィルが言う。 『くっ……俺でもロープに上がるだけで一ヶ月かかったのにフィルの奴どんな身体能力してんだよ!』 トムは、ゼノスの横で黙って試合を見ることにした。 「へ~、軽々ロープに登ってしまうんですねフィルさんは」 ススムは、自分でこいと行ったのに割と驚いていた。 にっと笑ってフィルは、 「さっさと、おっぱじめよう!」 っと言った。 「オッケーです。 ゼノス」 ススムは、矛を構えると指示した。 ゼノスは、こくりと頷くと 「はじめ!」 っと、再び手を上から下へとふった。 あの時の結界の仕返しをしようとフィルは、喘息失踪をロープの上で軽々しくやってのけた。 ガキンッ! フィルの振りかざした矛をススムが受ける。 「お――!」 っと、まわりの兵から歓声があがる。 無数の空気を切り裂く風切り音がする。 「すげ……」 兵の一人が呟く。 二人の手の動きに視力がついていける人間がはたしてこの国に何人いるだろうか? フィルは、ススムの攻撃を矛でうまく受け流しながら 『ッち! こいつ……私の動きについてきやがった!?』 そう思った。 こいつ本当にただの王子様かよッ!? キンッ!ガキンッ!っといくつもの 金属音を鳴り響かせ、そろそろ汗もかいてきたところだ。 フィルは、 『まったくどんな王子だよ……それなら……』 っと、思い。 「おっと!」 ポロリと、フィルは矛を落として見せた。 チャンスとばかりにススムは、フィルの懐めがけて矛をふった。その間数秒フィルは、ススムの矛をヒラリとかわし、落としかけた矛をかがんでキャッチし、そのままの体勢でススムの喉もとへとあたる寸前でピタリと矛をとめてみせた。 皆は、その光景に目を丸くして沈黙していたが、やがてハッとしたゼノスが 「勝負あり!」 っと、言った。 「お見事……」 ススムがフィルを見て汗を一滴下に流し言った。 「この前のかりは返した……」 フィルは、ススムにそう言ってニヤリと意地悪く笑った。 「いやはや、二人とも人間技ではないですな……」 ゼノスは、二人に手を差し出すとロープからおりるように促してくれた。 「どうも……」 フィルが、地に足をつけた瞬間、一斉にわっと 観戦していた兵達に囲まれた。 「マジですか!? ススム殿下のお嫁様! めっちゃ強いじゃね~ですか! なしてあんなお強いんで?」 兵達は、フィルにキラキラした目でにじりよった。 フィルは、思った、 『まだ、嫁ではないが……でもまぁ囲まれてイヤな気分ではない……』 「おい! お前達やめないか! 困っておられるではないか!」 ゼノスの一言で兵達は、やっと落ち着きを取り戻した。 ススムが 「次は負けませんよ」 っとフィルに言った。 「私は、一生まけん!」 フィルは、フンッとして応えた。 トムは、そんな二人に割って入り 「ススム様、今度フィルと試合するのは私です」 っと、言ったのであった…………――。
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