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 時計は、夜の十時をさしていた。 フィルは、ススムの部屋の前のドアをノックして開けた。 ススムは、寝台の上であぐらをかいて蝋燭(ろうそく)の光で書簡を読んでいた。 「まだ、仕事をしているのか……」 フィルは、呆れながらススムの横に座った。 「正直今すぐやめて寝たい気分です」 フィルは、 「私を呼んだのは、冗談か? なにか大事な話しがあるのかと思ったのだが……」 っと、困り顔で言った。 フィルの薄いネグリジェ姿を見て、ススムは正直 『今すぐ押し倒して、いけないことをなさっちゃいたいです!』 っと、思ったが言うと手荒い仕打ちが返ってきそうなのでやめておいた。 そのかわりに、手のひらサイズの木箱をフィルに渡した。開けると金の指輪が入っていた。 「なんだ……これ?」 フィルは、それを人差し指と親指でつまみ上げるとススムに訊いた。 「……婚約指輪ですが……」 ススムは、そう言うとフィルの左手の薬指にそれをはめた。 「どうも……つか、お前何をこの前から隠しているんだ?」 フィルは、ススムの瞳を覗き込んで言った。 ススムは、ばつが悪そうにし 「ちゅーしてくれたら教えます」 っと言った。 ……! 柔らかいそれは、すぐにススムの口から離された。 「速く言ってくれ……」 フィルは、唇をひとなめしニヤリと意地悪くわるとそうススムに言ってやった。 ススムは、 「……勘弁して下さい」 っと、顔を布団に押しつけて呟いたのである。 「なんだ、なさりたくなったのか?」 フィルが、意地悪くススムに言った。 「……」 ススムは、黙ってため息をつくと 「調べちゃいました……」 っと、静かにフィルに告げた。 ? 「魔境に住む大魔王は、昔は確かに暴れもので臣下達が手をやくほどだったらしいですが二年ほど前に赤ん坊を拾って育てるようになってから人が変わったように穏やかになったらしいのです。私が思うに、フィルさんがその事を知らぬはずもなさそうなのでなぜ私が訊いた時に、復讐などと言ったのかと……」 ススムは、疑問を投げかけた。 「それは……」 「それは?」 「秘密だ!」 ススムは、 「ここまできてそう応えますか……」 そう言ってフゥーと息を吐いた。 「話しがすんだなら私は、眠る」 フィルは、そう言ってススムのいない方へ身を(ひるがえ)した。 ススムは、蝋燭の火を吹き消して自分も布団をかぶると 「触って良いですか?」 っと言った。 フィルの平手打ちをくらったのは言うまでもない。 ―☆―☆―☆― 朝一で 「おはようございます」 っと、小姓のトムに言われた。 「察するに、昨日は蛇の生殺しだったようで……」 ススムの腹の上に頭をのせて枕にして寝てるフィルをみやりトムが言った。 「蛇娘だけにか?……」 結局あまり眠れなかったススムは軽くギャグをかましたのであった…………
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