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 昨夜の余韻にひたるようにススムは、責務室で自分の唇を指でなぞった。 机の上には、暖かい珈琲が置かれているが今はあのやわらかい感触を忘れたくはない。 「ススム様、仕事が進んでおりませんが、昨夜、やはりありましたか?」 トムは、書類の上に更に書類を足しながら微妙な顔をして訊いてきた。 「いや……なんでもない」 そう言ってススムは、また仕事に手をつけはじめたのであった。 ―☆―☆―☆―  フィルとパオは、ススムからまた鍵をかりてきて神殿に足を運んでいた。昨日もかりて色々調べたが結局何も手がかりが見付からないままやめた。 「っしゃ! そろそろ本気だしていくぞっ!」 フィルは、決意をかためた。 「昨日もそれ言ってたぞ。お前……」 パオは、呆れた顔で言ってやった。 「気合いでもいれないと嫌になるからさ」 フィルは、とりあえず宝玉を取り出してみた。 それは、この世界の手のひらサイズの地球儀みたいだ。 「不思議だよな~それ。雲とか動いてるのがわかるし本当に手のひら一つに地球が乗ってるみたいだ」 パオは、キラキラと青い宝玉を見つめて言った。 『……ぶっちゃけそうなんだが』 とは、絶対に言ってはいけないなぁ フィルは、それを元の位置に戻した。 「こういった物を持ちだすためにはいったい何をすれば良いんだか……」 フィルは、白蛇のモニュメントの前で座り込み考えをめぐらした。 どこかに、神殿全体の結界をはずすようなそんな装置でもあるのか? はたまた、何か特別な儀式やらがないとダメなのか…… フィルは、神殿の壁に書かれている文字やら絵がずっと気になっていた。しかし、そこに書かれている文字は文法も術式も何もかもがてんでバラバラなので意味がさっぱりだ。 絵の方は、たぶん私の母親が舞っているのがわかる。 「舞いでも踊らないとダメなんかな?」 フィルは、それを見て言った。 「舞いなら祭りごととかでも舞うだろ。それだけではつまり不十分なんじゃないか?」 パオは、もっともらしい事を言っている。 「私もそう思う。宝玉をどこかにセットしてみるとかが一番しっくりくる考えなんだけど……問題は、セットする場所だな」 フィルは、ぐるりと神殿をもう一度見渡す。 「さっぱりわからん……」 フィルがいくら見渡してもパーティーでススムが座っていた椅子と白蛇のモニュメントがあり下へおりる階段が中央にあって、床は広いだけで白い大理石が貼られているだけ。 後は、柱が何本かあるがそれも白塗り。 「手がかりはやっぱり壁に書かれている術式に近いものか。そろそろお昼だし一度ススムのとこ行ってみるか」 結局、それといってなんの手がかりも見付からぬまままたしても、神殿を後にした。
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