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「壁に書かれている物について、ですか……」
ススムは、今も忙しそうに羽筆を持ち何やらミミズのような文字をひたすら書いている。
「う~ん、壁の絵については何も知りませがこの国に古くからある童歌みたいなものならありますよ」
筆をスッと筆起きに入れると、ススムは
「確か……
くるくるまわる地球はまわる、太陽と月が入れ替わる。正しき星光がさしこむのさ。さすれば閉ざされし道今ひらかん。だったかと」
「お前
……」
フィルもパオもススムを、じっと睨んだ。
「なんです? 人を睨んで……」
ススムは、二人から目をそらして言った。
「お前……本当は、結界の解き方知ってるんじゃないのか? その童歌どう考えてもっ!」
フィルは、バンっ!と机を叩いた!
「私が知ってるのは、歌だけですよ。解き方までは知りません。私も貴女に隠し事をしてましたが。貴女も私に隠し事をしている。私としては、貴女がそれほどまでに世界伝を欲する理由が知りたいのですが……」
ススムは、フィルの目を見つめ真剣な眼差しで言った。
「王子さんも、人が悪い……が、フィルお前の態度にも問題あると俺は思うぞ」
パオは、もっともな事を言う。
だからこそフィルは、頭にきていた!
『言えば、この場にいる全員を巻き込むんだよっ!』
フィルは、居心地悪そうにぎりと奥歯を噛みしめうつむいた。
そんな苦しそうな表情を見せるフィルの前までススムは、移動すると両手を握ってきて
「私は、貴女の婚約者ですよ。貴女は、嫌々引き受けたかもしれなくても私は、本気で貴女を愛する覚悟です。なのでもう少し、私の事を、認めて下さい」
っと、端から訊いているとほとんどプロポーズのような言葉を発したのであった。
「王子……さすがの私も顔が暑いです」
トムがパタパタと顔をあおいだ。
「……」
フィルなんて顔から炎が出そうなほど真っ赤である。
『王子さんの勝ち』
パオは、独り言を呟いた。
「はぁ、もうわかった。白状する。
私は、あれをぶっ壊しに来たんだ。あれの宝力はあまりにも危ないからって母の遺言で。悪用するものが出ないうちに私はあれを壊したい」
フィルは、とうとう白旗をあげたのである。
「国の宝を壊すなんてっ! そんなっ!」
トムは、自分の主に訴えかけるような眼差しをした。
「まさか、壊したいと言われるとは……私は、何かに利用したいのかと思ってましたので……」
……どうしたものでしょうね。これは
ススムは、頭を悩ませた。
「壊す方法は?」
ススムは、訊いた。
「一つだけ。私の父の力で魔力を注ぎこむのみ。しかも私は、産まれてこのかた父に会ったことすらない……」
フィルは、素直に応えた。
「貴女の父とは、この国の神である、白大蛇でよろしいですか?」
ススムは、まっすぐとした視線をフィルに向け言った。
「「白大蛇っ!?」」
トムとパオは、後ろに一歩引いてフィルを見た。
「あぁ、そうだ……」
フィルは、なんだ知っていたのかみたいな顔をしてどかっとソファーに腰掛けるとすっかり冷めてしまったお茶をすすったのである。
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