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地下牢は、カビと埃の臭いがする。固い煉瓦の壁に鉄、通路にポツリポツリ火が灯ているが薄暗い。
『はぁ、油断した……』
牢屋の中で、フィルはしゃがんで指でのの字を書き拗ねた。
『そもそも、あの男が邪魔しなかったら逃げれたものをっ!』
あの男とは、昨日フィルを結界内に閉じ込めた奴で、黒髪に黒目、白いターバンに、ティッティ国特産の絹でつくった衣を纏った奴であった。
「あいつが――ッ!!」
イライラしながら、地に書いたそれを踏みつけ喚いた。
「元気な方ですね~」
声の主を見るフィル。
「お前は……」
私の邪魔した結界張ったバカ!
「王子ッ!!
このような場に来てはいけません!」
牢屋の見張り番をしていた二人の兵士は跪き言った。
「王子――! こいつが?!」
フィルは、苦々しく表情を歪ませて
まじまじと眺めた、
『そう言われると……こいつめっちゃ良い絹服着てるな……』
フィルは、ススムの着ている水いろの袖に金で刺繍の入ったそれをまじまじと眺めた。
「おい! おんなっ! 下品な目でススム様を観るのはやめろ!」
『んで、この昨日私にナイフ投げてきたのがお付きの野郎ってとこか……』
フィルは、あぐらをかき耳をホジホジしている。
「トム……お前は」
ススムと言われた王子は、お付きの野郎トムを少し黙らせて
「えっと、フィルさん? でしたね?」
「……」
フィルは、そちらを見ようともしない
「おい! こら! おんなぁ! ススム様がしゃべってんだろうが!」
トムは、荒々しく言った。
「さっきは、見るなって言ってたじゃん」
「きさまぁ――!」
「トム!」
王子は、威厳ある態度で
「黙ってなさい」
っと、トムをすこし下がらした。
「話しって何?」
フィルは、立ち上がりススムに問う
「あなたが、狙ったのは……」
ススムが穏やかではない表情で訊いた。
「世界伝」
フィルは、はっきりと言った。
世界伝、それはこの国に眠るといわれている秘宝のことである。
ススムは、表情を歪ませ
「あれは……」
「世界を手にする力を持ち、あしきものが持つと持ち主を呪うと言う……だろう?」
フィルは、ススムにだけ聴こえるよう小声で言った。
「! なぜそれを!?」
ススムは、知るはずもない情報を、フィルが知っていたことに驚いた……
ススムは、少し考え……
「まぁ、いいでしょう」
ススムは、そう言って
「あれのありかは~」
っと、フィルに近づき
「ありかは~?」
「ちゅっ」
フィルの頬にキスをした……
『……』
フィルは、
『こいつ……!』
っと、思っていると
「王子ぃぃ――!? なんって、ことを!
王族の口唇をなんだと思っているのですか?!」
トムが、飛んできて王子の口唇をフキフキと拭いた。
王子は、ニコニコと笑いながら
「明日も来ますね」
などと、フィルにウィンクしてこの場を、トムと一緒にさっていった。
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