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 パーティーは、ざっと三百人は入りそうな広い神殿で盛大に行われている。  ティッティ国は周りを砂漠で囲まれオアシスの中に建てられた小国である。砂漠には、白い大蛇がおり大蛇はこの国の象徴、つまり神様である。  約二十年前の悪魔との戦争で国は滅びかけたがそこに、一人の巫女がやって来て砂漠で舞いを披露したすると大蛇が…… なんというか、巫女様にメロメロになってしまったのである そして、そこらにいた悪魔を祓ったらしい。 その時、巫女が手にしていた宝玉が世界伝と言うこの国の宝になったものである。世界伝には、邪を祓う力があるらしく、邪の力が強い者がこの国にこぞって押し寄せたが、どの邪も皆、祓われてしまったのである。 以来、この国の宝は世界伝、神様は白大蛇となった。 『まぁ、どこにでもある伝説や伝承ではあるよな~』 フィルは、パーティーにうまいこと紛れ込みながら テーブルにある食事皿にあるビーフを一切れ口に入れモグモグしている。  一方ススム王子は、というとわらわらと貴族のお嬢様であろう人方に群がられていて、実に迷惑そうであるが、顔には出せないのであろうな ……フィルは、その様子を見て 『貴族であろうが王族であろうが、結婚に自由がないのは、さぞかし辛いであろうな……私には、関係のないことだが』  会場の奏でる音楽がダンス用に切り変わったようだ。 『さて、私の考えが正しかったら多分あそこに宝玉はある』 フィルは、ススム王子の座っている階段の一番高い間の玉座の後ろにある水の流れ出ている大蛇のモニュメントを眺めた。 『どうするかな……』 昨晩、盗みに入ろうとして失敗したのはこの神殿一体にかなり協力な結界がはられているからである。この神殿に忍び込むなり警報がなったのはおそらくそのせいだろう。 今は、パーティーという事もあり、結界はといてあるようだがその分、護衛や警備の人数が多いのである。 フィルは、いったんその場から離れると二階に上がれる箇所を探した。  神殿では、ダンスが行われている。 「はぁ……」 ススムは、玉座でため息をついた。 「王子、皆に見られますよ」 トムが隣で言う。 「わかっている」 「わかっていません」 ススムは、顔を少し歪ませ 「わかっているが、わかりたくないんだ……」 少し拗ねた顔がまた、将来イケメンになりそうなくらい美しい主人である。 「そんな、かわいい顔してもダメですよ。今日中に決めなくては、私が国王様に叱られます」 トムは、たんたんとそう言った。 「そんなに嫌ならいっそ、死にませんか……」 ニヤリと、笑いナイフをもった男が王子に走りよる 「きゃ――――ッ!」 会場がざわつく 一瞬の出来事だった…… ポタポタ…… 「フィルさん!?」 ススムは、玉座から立ち上がり言った。 「人の事言えた義理じゃないが、てめぇ~らみたいに、きたねえ奴には、ヘドが出る……」 フィルの、左腕にナイフが突き刺さっている。 その状態のままフィルは、その男の胸ぐらを掴み共に下へ落下していく フィルは、指をパチンとはじき、うまいこと下へと着地した。襲った男も着地しているが……! 「!?」 男の着地したポイントに、奇妙な魔方陣が輝きそして、 「殺さないで下さい!」 王子は、咄嗟に叫んだ パチン フィルが、再び指を鳴らす 輝きは、まし悪魔であろう男は、その場で生きたえたのであろう、自身から黒い煙がプスプスでている。 「なんで……」 ススム王子は、視線を落とした。 フィルは、 「私は、こいつと同じ悪党なんだよ。王子様……」 フィルは、地を蹴ると大きく跳躍し、皆が ハッ!? っと、気がついた時には、 フィルは、モニュメントに手を突っ込んでいた…… ジャキ…… フィルは、警備兵に包囲された。 ススムは、トムが前に出て守った。 しかし、フィルの右手にはもう宝玉がしっかりと握られているのである。 フィルは、その場をもう一度蹴りあげそのまま窓から退散しようとした……のだが、 ガツン! 鈍い音が響きそのうえ、下に落下した。 非常に残念な光景がその場に広がったのである。 「なんで……出られない……」 身体の頑丈なフィルは、赤くなった鼻を押さえながら言った。 「宝玉は、ここから持ち出せないのですよ」 ススム王子は、ため息をつき警備兵と共に下におりてきた。 おかげで、フィルは、その場で大人しく拘束されるしかなかった。 フィルは、両腕を縛られ警備兵に連れて行かれる最中であったのだが…… もぞもぞ…… その時、黒く焼け焦げたはずのナイフ男がみるみる縮んでゆくのをススム王子と国民達や警備兵は目の当たりした。 「なんだ……これ?」 トムが、フィルの造り出した結界内から消えた男の変わりに出てきた子象を槍の尾でツンツンした。 ススム王子は、 「えっと……? これは?」 っと、フィルを見た 「子象」 フィルは、応えた。 「じゃなくて……」 「正しくは、汚ならしいナイフ男悪魔を私が、変化呪文でかわいい子供の象にした」 フィルは、めんどくさそうに言った。 「殺さなかったんですか?」 「……」 フィルは、なにも言わなかった。
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