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灰色の村にやってきた山田くん
【お題:灰色の村 必須要素:山田】
転校生の名前は「山田」だった。ごく普通な姓だと思った。それに、ごく普通の容姿をしていた。だから目立たたないタイプなんだろうなと初見で思ったし、実際転校生特有のチヤホヤされる期間が終わったら周囲に馴染むというよりは埋もれていった。そして僕も、そんな山田に絡むことも特になかった。
なんでこんな、何もないド田舎の村に来たんだろうな。
クラスメイトはそう言っていたけど、僕はなんとなく、山田にはここが似合っていると思った。それはとんでもない勘違いだったけど。
週末。
僕はバスで隣の市まで買い物に行っていた。この村には小さな商店とコンビニがあるくらい。品数も少ない。特にゲームショップなんてものはないから、高校生である僕たちは娯楽を求めて隣の市までのバスに乗る。
帰り道。バス停から降りて30分も歩く。僕らが住む集落。
燃えていた。
全部。小さな商店も、コンビニも、学校も、僕の家も。
すべてが燃えていた。燃え盛っていて、たぶんこの村がこんなに明るかったのは初めてだった。
山田が立っていた。
僕は涙を浮かべながら、山田に感謝していた。手に提げていた紙袋が落ちる。あいつらに勝って来いと命令されたものだった。
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