走る天井とかいうあまりに酷い無茶ぶり

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走る天井とかいうあまりに酷い無茶ぶり

【お題:走る天井 必須要素:グミ】  あ、これ夢だわ。  おれは数秒で理解する。だっておかしい。天井が二足の脚で走っている。いや、走る天井って何だよ。それは概念として存在できるのか。そんな「あり得ない」存在が今大草原を縦横無尽に駆け巡っているのだから、夢以外のなにものでもないはずだ。 「ヨウ、ダンナ!」  話しかけてきたのはグミだった。あの、お菓子のグミ。色的にたぶんオレンジ味。目も耳も口もないのに、なぜかグミがおれに話しかけている。 「ナア、アレヲツカマエテクレ!」 「アレ? アレってあれのことか?」  おれは今もなお草をまき散らしながら走っている天井を指差す。 「ソウ、アイツ! ゾウキンヲツカマエテクレ」 「ぞうきん? あいつは天井だろう?」 「チガウゾ! アレハゾウキンダ!」 「うん? そういえばそうだな。あれはぞうきんだ」  確かにそうだ。あれはぞうきん以外の何物でもない。どうしておれはあれを天井などと思っていたのだろう。  でもぞうきんが二足で走っている。これはおかしい。どんぐりであれば走っていてもおかしくはないのだが。 「よく分からんが、毛虫を捕まえればいいんだよな?」 「ソウダ! カタツムリトニワトリヲマゼテ、シチューヲイタメルココチ二カンパイヲシヨウ」 「ああ、全くその通りだ。探偵に犠牲はつきものだよな」  そう呟いた途端、おれは草むしりだった。草むしりそのものだったのだ。6歳の頃、そうであったように、乾杯する前にダンゴムシを燃やすのは最低限の礼儀だ。 「マカセタゾ」  それだけ言って、グミはガムになった。おれだってそうだ。グミはガムなのだ。  右腕に力を込める。その瞬間、左足が破裂し、母親は父親だった。ゲロゲロ。  瞬間、意識が覚醒して目を覚ます。びっしょりと汗をかいていて、僕はグミなんだとき
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