ちょんまげをつけた猫

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ちょんまげをつけた猫

【お題:彼とぐりぐり 必須要素:にゃんまげ】  彼には愛おしいと思っているものに顔を埋めてぐりぐりする癖があった。  かわいいと思ったらもう無意識に身体が動いちゃうらしい。だから私もたまにぎゅってされて顔を押し付けられる。悪い気はしない。普段はクールな彼のその姿をたまらなく可愛いと思ってしまうくらいには、私もだいぶ毒されている。 「ココアにちょんまげをつけるのはどうかな?」  手を繋いで私の住むマンションまで歩いていたとき、彼が妙案を思いついたというトーンで言った。 「うちの愛猫を侍にするのはやめて」 「絶対可愛いと思うんだよ。名付けてにゃんまげ」 「うーん」  どうかな。ちょっと想像してみる。これ、可愛いかな。 「一回やってみていい?」 「……本人に聞いたら?」  私の家に着き、玄関のドアを開けるとココアが待ってましたと言わんばかりに私に飛びついてくる。私はココアを抱きかかえながら、彼にドアを早く閉めるようお願いする。ココアには脱走の前科がある。 「ただいま、ココア」 「ただいま、にゃんまげ」 「おい勝手に名前を変えるな」 「ごめんごめん」  彼はココアの頭を撫でながら笑う。 「お前にちょんまげをつけてもいいかい?」  ココアは「にゃあ」と鳴く。 「なんだって?」 「拙者前世は武士だったでござる、だって」 「嘘つけ」 「拙者、ちょんまげを所望するでござる」 「バーカ」  彼の頬をぐりぐりと押しながら、私は笑う。
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