汚れた身体

1/1
前へ
/69ページ
次へ

汚れた身体

【お題:汚れた人体 必須要素:衝撃の展開】 「わたし、綺麗かしら……」  歩いていると、声をかけられる。ひどく驚いた。鬱蒼とした森の中、こんなところに私以外に人がいるとは思わなかったから。 「わたし、綺麗?」  髪の長い女だった。白いワンピースだったのだろうが、砂や土で茶色になってしまっている服を着ている。もとの肌は病的なくらい白いのだろうが、服に包まれていない肌は全て砂や血にまみれている。右腕には無数の切り傷がある。 「少なくとも私に比べたら綺麗だと思う」  私の言葉に、女はカッと目を見開き、怒号を放つ。 「ふざけないで! あなた綺麗じゃない! 顔立ちは整っているし、肌は白いし、綺麗な服を着て! それ以上何が欲しいというの? 少しくらいわたしに分けてよ!」  女は大声をあげて泣き出した。 「わたし、醜いから。自分より汚れたものを見つけたいの……」 「それなら、大丈夫あなたより汚いものなんて無数にあるわよ」  本心からの言葉だった。 「気休めはやめて」 「本当だよ。今からそれを見せてあげる」  私は縄を取り出し、気にくくりつける。 「私、お腹の中に赤ちゃんがいるの」  女は黙ってみている。 「たぶん、私の身体はあなたよりも汚れているわ」  飛ぶだけですべてが終わる。  私の身体は宙に浮く。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加