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4:秘密基地
《セックス》について、あやふやながら慎吾が理解したのは、小三のある日のことだった。
慎吾はその日も、セトくんと一緒になって神社の裏手の雑木林に作った秘密基地へ向かっていた。すぐにでも雨が降り出しそうな曇り空の下で、慎吾は急いでいた。雨音は好きだけど、雨に濡れるのはイヤだったから。
湿気を帯びた空気を胸一杯に吸い込みながら神社へとつづく坂道を走っていると、不意に道ばたに捨てられた一冊の雑誌が目に入った。足を止めてその表紙を見た慎吾は、思わずツバを飲み込んだ。『CHO! 巨乳王』と題字された表紙には、少しハニかみながら何も着けていない豊満な胸を両手で隠した女性のグラビア写真が載っていた。
あたりに誰もいないのを確認した慎吾は、茶ばんだ紙が幾重にも重なる雑誌を手に取って「ミルフィーユみたいだな」と思いながらTシャツの中にしまい、ふたたび秘密基地へと走り出した。
廃材置き場から持ってきたベニヤ板を木の間に組んで作った天井から、ブルーシートを垂らしてテント状にしたものが慎吾とセトくんの秘密基地で、着いてみるとすでにセトくんが敷かれたゴザの上であおむけになって、きょう発売されたばかりの『週刊少年 サクセス』をゲラゲラと笑いながら読んでいた。
「セトくん。ちょっと、アッチ寄って」
「あ、チャーやっと来たか。今日は来ないかと思ってたよ」
「今日は、サクセスの発売日だからね」
「目羅博士おもしろいぞ。サガリ先生が——」
「ちょ、ちょっと、言わないでよ」
「アハハ、ドッキリだよ、ドッキリ。びびった?」
「そんなことよりさ、さっきイイの見つけてきたよ。見る?」
「え、ナニナニ?」
「ほら」
「うわ、すっげ、エロ本じゃん! おれ初めて見るよ」
「すごいでしょ」
「うん、マジですげえ」
「ドキドキするー」
「ドキドキするー」
「あ、ちょっと待って。でもこれ、ペリペリで全部くっついてるよ」
「カンケーないよ。おれこういうの剥がすの、得意なんだぜ」
「ホントに?」
「ホントだって。ちょっと待ってろよ……」
「……あ、ホントだ。すごい!」
「だから言ったろ。こういうの得意なんだってば」
「いいから、読もうよ」
「ドキドキするー」
「ドキドキするー」——
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