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山下奈緒子は、均整のとれた身体にまとう長袖の白いワンピース、裾から伸びる白磁のような細い脚、多感な少年たちを釘づけにするには十分に発育した胸の膨らみ、腰まで伸びたキレイな黒髪、そして高い鼻梁と二重まぶたのまるで幻想の世界から抜け出てきたかのような顔立ちで構成された非の打ちどころのない美少女で、次郎は言うまでもなく、学年一の秀才メガネ、鈴木純平までもがその姿に見惚れていた。
「えー、皆さん仲良くしてくださいね。」
言って、町山先生が山下奈緒子に指示したのは、慎吾のとなりの席だった。
舌打ちと嫉妬の入り混じる視線を感じながら、慎吾は舞い上がっていた。
「ぼ、ぼく、宮瀬慎吾。よろしく」
となりに座った山下奈緒子に緊張しながら自己紹介をすると、
「よろしく」
と、つれなく返された。
肩透かしを食らって目を泳がせると、遠くの席の直人と視線がぶつかった。ニヤニヤとする直人からたまらず目を下に逸らすと、山下奈緒子のキレイな脚が見えた。
慎吾は思わずゲップをした。
「大丈夫？」
気にかける左隣の野口清実に、うなずくことすらできない。
「じゃあ、宮瀬くんは教科書を見せてあげて」
町山先生に言われ、慎吾は山下奈緒子と机を合わせて国語の教科書を開いた。
「ありがと」
無機質ながら涼やかな山下奈緒子の声に一瞬ウットリとしかけたが、チラと見た彼女の横顔がとても物憂げに見え、慎吾は舞い上がった自分を恥じた。
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