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「で、今日もやるの?」
「ちがうよ、デブにはナオちゃんを止めてほしいんだよ」
ワチコのしかめ面が、奈緒子の笑い声を誘った。
「でもホントにもうやらないほうがいいと思うよ。初めてやった時だって、純平にバレちゃったじゃないか」
「いいの、バレても」
なぜか語気を強めてこたえる奈緒子。
「でもさ、二学期になってから『バラバラ女』の話を——」
慎吾は、ハッとして口を噤んだ。
きっと奈緒子は、二学期からクラスメイトとのあいだに高い高い壁ができるのだと直感しているのだ。たぶんそれは、現実のものとなる。登校日のときのみんなの目がそれを物語っていたし、太一に至っては早くも奈緒子を標的としていた。
だから奈緒子は、みんなで考えたバラバラ女を町に広める遊びを、夏休みの最高の思い出にしようとしているのだ。
そこまでを考えた慎吾は、そのあとに起こるだろうあることに思い至った。
奈緒子はイジメによって、前の学校を転校しなきゃならなかった。
今回もそうなってしまうかもしれない。
そんな……イヤだ……
奈緒子ともう会えなくなるなんて、考えたくもない……
「……分かった。夏休みが終わるまでやろうよ、そのドッキリ」
「おい、デブなに言ってるんだよ! やめさせるのがお前の役目だろ!」
声を荒げるワチコに、意志は揺らがないことを目顔で伝えると、ワチコはヤレヤレと首を横に振って、わざとらしいため息を吐いた。
「でもおれ、きのう家を抜け出してることがバレちゃったから、夜はもう無理だよ」
「あたしも宿題が溜まってるから無理。今日から夏休みが終わるまで、夜はずっとお母さんと一緒に宿題をやらなきゃいけないんだよ」
「いいよ、べつにふたりは。今日からはチャーとやればいいもんね」
「う、うん」
「チャーは大丈夫なのかよ、宿題は?」
「う、うん。来なかったあいだに、大体は終わらせたから」
「ナオちゃんは大丈夫なの?」
「とっくに終わらせてるよ」
「さすがですねえ」
憎まれ口を叩いた直人の肩に、奈緒子が拳を優しく突き当てる。
ワチコが笑い、慎吾もたまらずに吹き出していた。
夏休みが終わるまでのあいだは、奈緒子の気が十分にすむまで付き合ってやろう。
自分にできることは、それくらいしかないのだから。
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