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送迎いらないとかいうくせに、俺がやめないと言えばそれは否定しない。多分こういう姉ちゃんの面倒くさいところを理解できるのも、多分俺くらいだしさ。
☀
高校の三者面談ってやつは、どうして夏休みにあるんだろう。
いつも姉ちゃんと歩く道を、今日はおばさんの車で走る。とても涼しくて快適で、だけどやっぱり俺は、姉ちゃんと他愛のない話とかしょうもない文句を言いながら歩く、暑くて怠い道のりの方が好きだった。
俺の面談は予想よりもずいぶん早く終わった。成績や学校での態度は特に悪いことはないから、すぐに必要な話は終わってしまって、担任やおばさんから「何か言いたいことはないのか」と聞かれたけれど、特に何も思い浮かばなかった。自分がどうしていきたいかは、まだよくわからない。
ただ、今の俺が不自由なく生きていくためには、おじさんやおばさんに嫌われちゃだめだってことはわかる。だから、そうならないように頑張ろうとは常に思っている。
俺の後に始まった姉ちゃんの面談は、俺の何倍も長かった。受験生だからこんなものなのか、姉ちゃんがいろいろと期待をかけられているからなのかは、わからないけれど。おばさんと一緒に教室から出てきた姉ちゃんの顔は、ひどく疲れていた。
松葉杖のある姉ちゃんは広い助手席に、俺は姉ちゃんの後ろの席に乗り込む。帰り道に、丁度近くで用事を済ませたと連絡のあった美月ちゃんも拾って四人になった。こうやって四人で車に乗ることなんて久しぶりで、なんだか落ち着かない。
「すず、寝ちゃったね」
おばさんの声にそっと助手席を覗き込むと、松葉杖を抱きしめて器用に姉ちゃんは眠っていた。疲れていると思ったのは、やっぱり間違いじゃなかった。
「すずもだけど、輪太郎ももっとわがまま言って、頼ってくれていいのよ?」
急にそんな風に言われ、思わず顔を上げる。ミラー越しに俺と目が合ったおばさんが、そっと微笑んだ。
「家族なんだから」
家族、か。正直、どうにもピンとこない。
もう三年半も俺と姉ちゃんを、実の娘の美月ちゃんと分け隔てなく育ててくれているおばさんたちには、とても感謝しているし、大好きだ。だけど、やっぱり親戚って感じというか。ただ、おばさんが俺を想ってくれていることは分かるので、とりあえず無難に笑っておく。
「うん、ありがとう」
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