キスマークは残さないで

「あ、あ、ん、あぁぁっ！」
「あー、締まる。なあ、しばらくコレでいいだろ？」

　ずちゅ、と水音を立て光樹が私のナカでわずかに動く。けれどそれは強い快感とは程遠く、焦らされるだけのもの。光樹に「うごいて」ってねだっても、彼は少しも動かない。

「ほら、コッチでって言ってんだろ」
「ッあ、あ、んんぅっ！」

　捏ねて、人差し指と親指で潰して、硬く尖ったソレを上下に扱く。

「あ、あ、ん、んんッ！」
「……ッ、はぁ……ッ」

　耳元に光樹の吐息がかかる。彼も感じていると思うと、何だか嬉しくなる。

「はぁ、今締まった」

　心が揺さぶられたのが体に反映されたらしい。光樹が嬉しそうに耳元でそう囁く。

「十和子ちゃん、気持ちよさそうだね。ナカに突っ込まれて、クリこねこねされるのがそんなにいいんだ」
「ん、い、きもちい、んん」
「十和子ちゃんが気持ちよさそうなの見てたら、僕もこんなになっちゃった」

　浩介の下腹部はまた膨らんでいて、先っぽから先走り液が溢れている。さっき出したばっかりなのに、早いよ。

「ほら、しゃぶってやれよ」

　光樹からも許可が出た。私が口を開けると、浩介は無理やり入れてくる。口の中がいっぱいになって、ちょっとしょっぱい。舌をモゴモゴと動かすと、浩介は満足そうに息を吐く。

「やらしいな、十和子。口に突っ込まれた瞬間、また締めやがって。口犯されんのも気持ちいいのか？」

　私がこくこくと頷くと、二人から笑い声が聞こえてきた。そして、浩介は喉の奥まで、光樹は子宮に当たるくらい強く押し込んでくる。

「ん、ぐ、ふぁ……」
「おい、噛むなよ。コイツのが千切れたら困るのは十和子だからな」
「怖いこと言わないで。大丈夫だよね、十和子ちゃん。ほら、舌動かして」

　息をするのが苦しい。口の中には浩介の味が広がっていて、ちゃんと舐めたいのに、光樹がそれを邪魔する。コリコリと指の腹全体で淫核を嬲って、その度に私の体はビクビクと跳ねていく。口がいっぱいだから、声を出すことも出来なくて、苦しい。

「さっきからイキっぱなしに見えるけど。そんなに上も下も犯されて気持ちいいんだ？」

　小さく頷くと、浩介が笑った。浩介はさっきから緩く腰を動かしている……まるで最奥を突かれているみたい。頭もそう錯覚してしまったみたいで、私の頭の上で光樹が深く息を吐いた。

「君、もう我慢できないんじゃない？」
「あ？　てめー、何言ってんだ」
「早く楽になっちゃいなよ。十和子ちゃんもそう思わない？」

　頭の中がふわふわで何も考えられない。光樹が「アー、もうこれトンでるわ」と言ったのが聞こえてきた……ような気がする。

「じゃ、楽にしてやるか。ほら、口から離せ」
「はいはい」

　ずるり、と口の中に埋まっていた浩介の屹立が抜けていく。浩介を見上げると「また後でね」と唇を撫でた。

「おら、こっちだ」
「――んん゛っ！」
「欲しかったんだろ？　なァ？」
「ん、んぁ、あ、やぁあ……あ、あぁ！」

　粘膜が擦れあう部分からは、ずちゅ、ずちゅとみっともない音が響く。ナカを強く擦られるたびに私の腰が跳ねてしまう。光樹はお尻をぎゅっと掴んでベッドに押し付ける。浩介が私の手首を掴んで、同じように押さえつけた。体を動かすことも出来ず、私はただ快楽の渦に巻き込まれていく。
　光樹の男根は、ずるりと抜けたと思えば子宮口まで強く叩きつけてくる。愛撫がだんだん荒々しくなっていく……彼の限界も近い。

「みつ、き、も、だめ、イク、イクから」
「……はぁっ、俺も。出すから」
「だひ、だして、いや、あ、あぁあ……！」

　体に力が入る。全身にびりびりとした快感が広がっていく。ふっと力が抜けた時、光樹がうめき声をあげて……私のナカで、どくどくと脈打つのを感じた。荒い息遣いが落ち着いた時、その拍動も消えていった。光樹は名残惜しむ様にゆっくりと抜いていく。

「……はぁっ」

　そして、尾てい骨から背筋を昇っていくように何度もキスを落としていって……首筋にたどり着いた時、触れると言うより食むような感触があった。

「光樹、だめ」
「……あ。わるい」

　吸おうとしていた光樹は離れていった。

　私たちが交わした約束は、三つある。

　一つ目は、どちらかと二人きりで会わないこと。会う時は必ず三人で。

　二つ目は、比較しないこと。どっちが気持ちいいとか、好きとか、絶対に比べたりはしない。

　三つ目は、私の体に痕跡――キスマークを残さないこと。

　だってそんなものを許してしまったら……私は鏡を見るたびに熱情に流されていく快楽を思い出してしまう。それに、どちらかが付けようものなら、もう一人が必ずつけたがるに決まっている。私の体はキスマークだらけになっちゃう。

　またビニールが破ける音が聞こえた。顔をあげると、浩介が自身にコンドームを付け始めている。

「もぉ、少し休ませて」
「だめ。もう我慢できない」

　浩介の目はギラギラと光っていて、その中心には私の姿がある。私に夢中になっている浩介が愛おしくて、私は「仕方ないなぁ」と手を伸ばした。

「上、乗って」

　ソファベッドのヘッドボードを背もたれにして浩介が座る。腕を引かれた私は浩介に背中を向けて、ゆっくりとそそり立つソレを体に埋めていく。

「……はぁ、あ、も、なんですぐ元気になっちゃうの？」
「十和子ちゃんがかわいいのが悪い」

　浩介の胸と私の背中が密着する。浩介は腕を回して、両手で胸を柔らかく包み込む。彼が動くたびに揺れる乳房を支えるように、やわやわと揉みしだいていく。頂に触れないその愛撫が何だかもどかしい。

「……そうだな、お前は本当に可愛い」

　光樹が私たちの脚元に近づいてきた。そして、指の腹で尖りきった淫核を押しつぶす。

「ふぁ、あ、あぁあ！」
「……っ、ほんとだ、よく締まる」
「だろ？」
「だめ、おねがいだから、普通にして」

　光樹の手を抑えると、彼は首を横に振った。

「ダメだ。十和子が狂うところが見たい」

　浩介が耳元でそっと囁く。その声すら、私の頭を揺さぶり快楽に繋がってしまう。

「……ほら、もっと【ダメ】になるとこ、見せて」