§アル・フィーネ

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 二人の人生は、急カーブを描いてひとつになった。  気が付いたときには元に戻れなかった。  あの大勢いたガールフレンドの誰にも、こんなふうに運命を感じたことはなかった。  レオナードの隣にいて、その華奢な肩を抱くとき、アンドリューは自分が強大な力を得たように感じる。  動物が本能で、子どもを守ろうとする行動と原理は同じだ。  外敵に目を光らせ、神経を研ぎ澄ませて戦いに備えるとき、不思議と自分の心は湖面のように落ち着いている。愛着の対象が心を癒し、不安を軽減させる。  レオナードは甘えて依存してくる。  アンドリューがいなければ生きられないと言ってくる。  だが本当に彼なしでいられないのは、アンドリューの方だ。  レオナードを守りたいと思った。  可哀想な彼を救いたいと思った。  自分の愛情で、彼を幸せにしたいと思った。  だが古今東西の戯曲にあるように、女を救いたいと思った男たちの運命は、みな破滅に向かって行く。  タイスもマノンもカルメンも、人の力では救うことができなかった。  人が人を救えると思うこと自体が、傲慢なことなのかもしれない。
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